トップ >多目的コホート研究 >現在までの成果 >日本食パターンと死亡リスクとの関連について
リサーチニュース

JPHCに関するお問い合わせはこちら
 


 

多目的コホート研究のメールマガジン購読申込みはこちら

多目的コホート研究(JPHC Study)

日本食パターンと死亡リスクとの関連について

―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告―

 

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防と健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。平成7年(1995年)と平成10年(1998年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、東京都葛飾区、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の11保健所(呼称は2019年現在)管内にお住まいだった、45~74歳の方々のうち、食事調査アンケートに回答した男女約9万人を平成28年(2016年)まで追跡した調査結果にもとづいて、日本食パターンと死亡リスクとの関連を調べた結果を専門誌で論文発表しましたので紹介します(Eur J Nutr. 2020年7月WEB先行公開)。

 

日本食パターン

食事調査アンケートの結果から、本研究で定義した「日本食パターン」は、先行研究で用いられていた8項目(ご飯、みそ汁、海草、漬物、緑黄色野菜、魚介類、緑茶、牛肉・豚肉)の摂取量を点数化する日本食インデックス(JDI8; 8-item Japanese Diet Index)を使用しました。日本食パターンスコアは、JDI8の7つの項目(ご飯、みそ汁、海草、漬物、緑黄色野菜、魚介類、緑茶)では、男女別に、摂取量が中央値より多い場合に各1点、牛肉・豚肉では、摂取量が中央値より少ない場合に1点として、合計0~8点で算出しました。この日本食パターンのスコアを4つのグループに分類し、その後約18.9年の追跡期間中に確認された死亡(全死亡、がん死亡、循環器疾患死亡、心疾患死亡、脳血管疾患死亡)との関連を調べました。

 

日本食パターンのスコアが高いグループでは、全死亡・循環器疾患死亡・心疾患死亡のリスクが低かった

その結果、日本食パターンのスコアが低いグループに比べて高いグループでは、全死亡のリスクは14%、循環器疾患死亡のリスクは11%、心疾患死亡のリスクは11%低かったことがわかりました(図1)。

 

図1.日本食パターンと死亡リスクとの関連

362_1

 

日本食パターンに含まれる8項目の食品と全死亡との関連

JDI8の8項目の食品において、それぞれの食品の摂取量を多い・少ないの二つのグループにわけ、「少ない」に比べて「多い」グループの死亡リスクを調べました。その結果、摂取量が多いグループで、海草では6%、漬物では5%、緑黄色野菜では6%、魚介類では3%、緑茶では11%死亡リスクが統計学的に有意に低下することがわかりました(図2)。

 

図2.各食品項目の摂取量が多いグループと全死亡リスクとの関連

362_2

 

今回の研究から見えてきたこと

今回の研究では、日本食パターンにより全死亡・循環器疾患死亡・心疾患死亡のリスクが低かったことが示されました。理由として、日本食パターンのスコアが高いグループでは、海草や漬物、緑黄色野菜、魚介類、緑茶に含まれる健康に有益な栄養素(食物繊維や抗酸化物質、カロテノイドやエイコサペンタエン酸など)の摂取量が多かったことが考えられます。さらに、各食品の死亡リスクの低下への影響は小さいですが、食品単体ではなく、日本食パターンとして評価することにより、各食品に含まれる様々な栄養素の作用により、死亡リスクが低下した可能性が考えられます。
一方で、日本食パターンは地中海食パターンなどの他の食事パターンと比較して、食事に含まれる食塩が多いという懸念があります。本研究においても、日本食パターンのスコアが高いグループほど食塩摂取量が多いという結果でしたが、同様にカリウムの摂取量も多く、食塩とカリウムの摂取量の比は全てのグループでほぼ同じ値でした。通常、食塩摂取量が多いと、血圧をあげることで循環器疾患のリスクとなりますが、反対に、カリウムには、食塩のナトリウムを体外に排泄し血圧の上昇を抑えるという働きがあります。そのため、日本食パターンのスコアが高いグループでは、食塩摂取量が多い場合でも、同様にカリウム摂取量も多かったことから、食塩による影響が打ち消された可能性があります。
本研究では、日本食パターンと全がん死亡との関連はみられませんでした。理由として、がんの部位によって食品や栄養素との関連が異なるので、全がん死亡としては関連がみられなかったことなどが考えられました。そのため、今後も日本食と特定のがんとの関連を検討する研究が必要です。本研究の限界として、1回の食事調査アンケートによる評価となるため、食習慣の変化を考慮できていないことが挙げられます。

上に戻る