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多目的コホート研究(JPHC Study)

身体活動質問票から得られた強度別身体活動の正確さについて

―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告―

 

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防と健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。
身体活動と病気との関連を明らかにする研究では、1人1人の身体活動を把握する方法の一つとして、アンケート(身体活動質問票)を用いて、各個人の習慣的な身体活動量を推定しています。身体活動には低いものから高いものまで強度がわかれていますが、強度別の身体活動を含めて、このアンケートから推定した身体活動量の正確さを確認することは、身体活動と病気との関連について調べた研究結果の信頼性を確保するために必要な過程です。今回、私たちは身体活動質問票から推定した強度別の身体活動の正確さを検討し、その結果を専門誌に発表しましたので紹介します(Prev Med Rep.2020 Aug 6;20:101169)。

 

身体活動の強度について

身体活動とは、「安静にしている状態より多くのエネルギーを消費するすべての動作のこと」を指し、大きく運動と生活活動に分類されます(図1)。また、身体活動は、その強度によって、低強度(1.5超~3.0メッツ未満)、中強度(3.0~6.0メッツ未満)、高強度(6.0メッツ以上)に分けられます。さらに低強度よりも低い強度の活動を、座位行動といいます。
これまで身体活動には、肥満や心血管疾患を予防することや、死亡のリスクを下げる等、様々なよい健康影響があることが報告されています。特に、中強度以上(3メッツ以上)、つまり歩行程度以上の身体活動(中高強度の身体活動)と良好な健康状態との関連が数多く報告されています。このため、厚生労働省が定める身体活動ガイドライン(健康づくりのための身体活動基準2013)や世界保健機関(WHO)のガイドラインは、健康増進のために中強度以上(中高強度)の身体活動を推奨しています。
しかし、日本人では、ガイドラインで示される中高強度の身体活動を行うことの健康への影響について、科学的根拠は未だに十分とは言えません。今後、中高強度の身体活動と健康への研究を進めていくためには、身体活動質問票と、実際の身体活動量との評価を行うことが重要になります。

 

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研究方法の概要

今回の研究では、新潟県長岡、長野県佐久、東京都葛飾、沖縄県宮古の4保健所管内(呼称は2019年現在)にお住まいだった方々のうち、多目的コホート研究の10年後調査に参加し、かつ調査アンケートの身体活動質問票および行動記録票に3~6か月間隔で2回回答いただいた110人の男女を対象としました。
はじめに、身体活動質問票で把握した身体活動の内容にあわせて、それぞれ適切な強度(メッツ)をあてはめ(表1)、さらに、各身体活動の実施頻度(例:週1回等)と、1回あたりの時間(例:1回あたり30分等)から、1日当たりの強度別の身体活動量(メッツ・時/日)を計算しました。
次に、身体活動質問票から推定した強度別の身体活動と、詳細な行動記録票による強度別の身体活動との相関係数から身体活動質問票による強度別の身体活動の妥当性を、また身体活動質問票の2回の回答間の相関係数から身体活動質問票による強度別の身体活動の再現性を検討しました。

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身体活動質問票から推定した身体活動の妥当性と再現性

身体活動質問票から推定した強度別の身体活動量と、行動記録票から算出した実際の身体活動量との妥当性(正確さ)の相関係数は、中強度で0.300、中高強度で0. 610、総身体活動量で0.672でした。また、測定の再現性(確からしさ)の相関係数は、中強度で0.482、中高強度で0.645、総身体活動量で0.684でした(表2)。

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この研究結果からわかること

本研究の結果から、身体活動質問票で推定した中強度および中高強度の身体活動量は、疫学研究を行うために必要なある程度の正確さがあることが分かりました。そのため、身体活動質問票は、ガイドラインで推奨されている中高強度の身体活動の評価を行うために、妥当な質問票であり、そこから得られる様々な知見の確からしさを支持するものと考えられます。今回の研究は、今後、多目的コホート研究で、ガイドラインで推奨されている中高強度の身体活動と、糖尿病、がん、脳卒中、心筋梗塞などの疾患との関連を調べるために、重要な基礎資料となります。
本研究の限界として、身体活動質問票から推定した高強度の身体活動量の妥当性の相関は、-0.095と低値でした。その理由として、本研究の対象者が中年~高齢者に偏っており、高強度の身体活動の実施者が少なかったため、統計学的に十分な検討ができなかった事が考えられます。そのため、今後、若年者を含めて検討するなど、さらなる研究が必要です。

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