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多目的コホート研究(JPHC Study)

職業・生活習慣・がん家族歴と非メラノーマ皮膚がん罹患との関連

―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告―

 

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防と健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。平成2年(1990年)と平成5年(1993年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の10保健所管内(呼称は2019年現在)にお住まいだった40~69歳の方々のうち、食事調査アンケートに回答した男女約10万5千人を平成25年まで追跡した調査結果にもとづいて、職業・生活習慣・がん家族歴と、その後の非メラノーマ皮膚がんの罹患リスクとの関連を調べた結果を専門誌に論文発表しましたので紹介します(Cancer Sci 2020年8月公開)。

皮膚がんの中では、基底細胞がん・有棘細胞がんなどの非メラノーマ皮膚がんや悪性黒色腫(メラノーマ皮膚がん)が多くみられます。(皮膚がんの分類、がん情報サービス

非メラノーマ皮膚がんの罹患率は世界において増加しており、欧米で行われた先行研究では、職業上の紫外線曝露が、非メラノーマ皮膚がんのリスクを増加することが報告されています。また紫外線曝露の他に、アルコールやコーヒーの摂取量、喫煙、身体活動、体格(body mass index, BMI)などの要因が、非メラノーマ皮膚がんの罹患リスクを増加することも報告されています。しかしながら、非メラノーマ皮膚がんの罹患リスクに関する先行研究は、主に白色人種を対象としており、黄色人種が中心であるアジア人における疫学研究は行われていませんでした。また、日本人における非メラノーマ皮膚がんの罹患に影響を与える要因については、よくわかっていませんでした。そこで、本研究では、職業や生活習慣、がん家族歴と非メラノーマ皮膚がんの罹患リスクとの関連を検討しました。

調査アンケートの結果に基づいて、

  • 職業(屋外労働(農林水産業)・非屋外労働(農林水産業以外))
  • アルコール摂取(飲酒なし、150g/週未満、150g/週以上)
  • コーヒー摂取(飲まない、1~4回/週、1回/日以上)
  • 喫煙状況(吸わない、過去喫煙、現在喫煙)
  • 余暇の身体活動(男性:行わない、1~3日/月、1日/週以上 女性:行わない、1~3日/月以上)
  • BMI(23未満、23~25、25kg/m2以上)
  • がん家族歴(ある、ない)

と、その後の非メラノーマ皮膚がんの罹患リスクとの関連について調べました。

 

男性において、屋外労働とがん家族歴があるグループでは有棘細胞がんのリスク増加と関連があった

2013年までの追跡期間中に、男性133人と女性151人が、非メラノーマ皮膚がんに罹患しました。男性において、職業が非屋外労働と比較して、屋外労働では、有棘細胞がんの罹患リスクが増加しました(図1)。また、がんの家族歴がある男性では、有棘細胞がんの罹患リスクの増加と関連がみられました。職業や家族歴と基底細胞がんとは関連がみられませんでした。
一方、女性では、職業やがんの家族歴と有棘細胞または基底細胞がんとは関連がみられませんでした。
生活習慣(アルコール摂取、コーヒー摂取、喫煙状況、余暇の身体活動、BMI)と非メラノーマ皮膚がんの罹患リスクとの関連は、男女ともみられませんでした。

 

図1.男性における職業およびがん家族歴と有棘細胞がんの罹患リスク

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※アルコール摂取、コーヒー摂取、喫煙状況、余暇の身体活動、BMI、職業、がん家族歴を統計学的に調整

 

この研究について

今回の研究から、男性では、職業が屋外労働の場合やがん家族歴があるグループでは、有棘細胞がんの罹患リスクの増加がみられました。この理由として、屋外労働では紫外線照射によりがんの抑制に関係するTP53遺伝子が変異することから、有棘細胞がんの罹患リスクが増加した可能性が考えられます。また、男性において、がんの家族歴と有棘細胞がんの罹患リスクの増加がみられたことについて、白色人種では、皮膚がんの家族歴が皮膚がんの要因の1つであることが報告されていますが、本研究のがん家族歴には、皮膚がんを含めたすべてのがんが含まれているため、結果の解釈には注意が必要です。
なお、アジア人における職業・生活習慣・がん家族歴などの要因と非メラノーマ皮膚がんのリスクとの関連についての研究は、本研究が初めてであるため、今回の結果を確認するためには、今後もさらなる研究が必要です。

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