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多目的コホート研究(JPHC Study)

肉類摂取と死亡リスクとの関連

―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告―

 

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防と健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。平成7年(1995年)と平成10年(1998年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、東京都葛飾区、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の11保健所(呼称は2019年現在)管内にお住まいだった、45~74歳の方々のうち、食事調査アンケート回答した男女約9万人を平成23年(2011年)まで追跡した調査結果にもとづいて、肉類摂取と死亡リスクとの関連を調べた結果を専門誌で論文発表しましたので紹介します(PLOS ONE 2020年12月公開)。

日本では食生活の欧米化により1970年から2006年までの間に肉類の摂取量が約2倍に増加したといわれています。日本では、肉類摂取による動物性脂肪やたんぱく質の摂取が1960年代以降の日本人の脳卒中減少に貢献したとされる一方で、欧米諸国では、赤肉や加工肉の過剰摂取による様々な疾病リスクの増加が報告されています。しかし、これまで、肉類摂取と死亡リスクについて、日本からの研究報告は少なく、また結果が一致しておらずよくわかっていませんでした。そこで本研究では、肉類摂取と主要死因別死亡との関連について検討しました。

今回の研究では、調査開始時におこなった食事アンケートの結果を用いて、肉類の総量や赤肉(牛・豚)・加工肉(ハム・ソーセージ等)・鶏肉の1日当たりの摂取量を少ない順に人数が均等になるよう4グループに分け、最も少ないグループと比較して、その他のグループのその後の死亡リスクについて調べました。解析にあたっては、年齢、地域、喫煙、飲酒、身体活動、肥満度、既往の有無(糖尿病、高血圧症)、総エネルギー摂取量、総脂肪摂取量、野菜・果物・魚・乳製品・卵・食塩の摂取量を、グループによる違いが結果に影響しないように統計学的に調整しました。

 

肉類の摂取量が最も多い男性で、総死亡リスクと心疾患死亡リスクが上昇していた

男性において、肉類全体の摂取量が最も少ないグループと比較して、最も多いグループで総死亡リスクが高くなり、また、赤肉でも最も摂取量の多いグループで総死亡リスクが高いという関連がみられました(図1)。女性においては、肉類摂取による総死亡リスクとの関連はみられませんでした。

図1.肉類全体および赤肉の摂取量と総死亡リスクの関連

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 さらに、肉類摂取と死因別死亡との関連を検討したところ、男性では肉類全体および赤肉の摂取量が最も少ないグループに対して、最も多いグループでは、心疾患死の死亡リスクが高くなりました (図2)。一方、女性の死因別死亡では、肉類全体および赤肉の摂取量が多いグループで、脳血管疾患の死亡リスクが統計学的に有意に低下していました。

図2.肉類摂取量と死因別死亡リスクとの関連

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※摂取量が最も少ないグループに対する摂取量が最も多いグループのハザード比を示しています。 

 

この研究について

今回の研究から、男性では、肉類全体および赤肉の摂取量が最も多いグループにおいて、総死亡および心疾患死亡リスクが高くなっていました。この結果は、これまでの欧米や中国からの疫学研究をまとめた、メタアナリシス研究において、赤肉の摂取量が多いと総死亡リスクが高いことが報告されている結果と一致しています。これまでの研究でも、肉類に多く含まれる飽和脂肪酸を多く摂取すると、心疾患のリスクが増加することが報告されていることから、本研究でも同様の関連がみられたと考えられました。一方、鶏肉の摂取量が多いと、がんの死亡リスク低下との関連がみられましたが、メカニズムはよくわかっておらず、さらなる研究が必要です。
女性では、肉類全体および赤肉の摂取量の多いグループで、脳血管疾患死亡リスクの低下と関連がみられました。肉類は主要なたんぱく源であり、適量のたんぱく質摂取は血圧を適正に保ち、脳卒中を予防すると報告されています。さらに女性は男性に比べ、肉類全体の摂取量が少ないため、過剰摂取の影響が出にくいことが考えられました。
今回の研究の限界として、1回のアンケート調査から計算された摂取量で計算しており、追跡中の食事の変化については考慮していないことなどがあげられます。

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