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現在までの成果

メタボリックシンドローム、身体活動と複数の血中炎症関連マーカーとの関連について

―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告―

 

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防と健康寿命の延伸に役立つような研究を行っています。平成5年(1993年)に、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の6保健所管内(呼称は2019年現在)にお住まいで、健診などの機会に血液を提供してくださった約2万3千人の方の一部のデータにより、メタボリックシンドローム、身体活動量と複数の血中炎症関連マーカーとの関連について検討しました。その研究結果を論文発表しましたので紹介します(Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 2020年8月公開)。

メタボリックシンドロームは、内臓脂肪の蓄積により循環器疾患のリスク要因が集積している状態であり、軽度の慢性炎症を引き起こし、血中炎症関連マーカーとの関連が報告されています。また、身体活動が低いことは、将来、メタボリックシンドロームになるリスクが高いことが知られており、血中炎症関連マーカー、特にIL6およびCRPのレベルの上昇と関連することが報告されています。しかし、これまでのほとんどの研究は欧米で行われており、メタボリックシンドロームおよび低身体活動と、これらに関連する炎症関連マーカーのごく一部しか調べられていませんでした。
今回の研究では炎症に関与するサイトカイン、ケモカイン、可溶性受容体など複数の血中炎症関連マーカー濃度を一度に測定する技術を用い、参加者774人から収集した血液を用いて、メタボリックシンドローム、低身体活動と110個の血中炎症関連マーカーの濃度との関連を調べました。

メタボリックシンドロームは、次の5つの項目のうち、3つ以上が該当する場合としました。1)高血糖:空腹時血糖が100 mg/dL以上、随時血糖が140 mg/dL以上、または治療薬服薬あり、2)高血圧:収縮期血圧が130 mmHg以上、拡張期血圧が85 mmHg以上、または治療薬服薬あり、3)低HDLコレステロール血症:HDLコレステロールが、男性では40 mg/dL以下、女性では50 mg/dL以下、または治療薬服薬あり、4) 高トリグリセライド(中性脂肪)血症:トリグリセライドが、150 mg/dL以上、または、治療薬服薬あり、5) 肥満:体格指数(body mass index: BMI)が25 kg/m2以上。

低身体活動は、質問票から1日当たりの身体活動量(メッツ/日)を計算し、均等に4つのグループに分け、最も身体活動量が低いグループとしました。

保存血液を用いた研究
多目的コホート研究のベースライン調査アンケートに回答のうえ、健診などの機会に血液を提供してくださった40~69歳の男女約2万3千人の方々から774人を無作為に選びました。

 

メタボリックシンドロームは6つの血中炎症関連マーカーと統計学的に有意な関連

メタボリックシンドロームでは、インターロイキン受容体(IL18R1)、急性期タンパク質(SAP、CRP)、ケモカイン(CCL19 /MIP3β)の4つの炎症関連マーカーと正の関連がみられ、ケモカイン(CXCL12/CCL28、SDF1α+β)の2つの炎症関連マーカーと負の関連がみられました(図1)。一方、低身体活動と炎症関連マーカーとの間に統計学的に有意な関連はみられませんでした。

図1.メタボリックシンドロームと血中炎症関連マーカーとの関連

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*110の血中炎症関連マーカーのうち統計学的に有意な関連がみられたマーカーのみ図示。
*オッズ比(OR)が1.0より大きい炎症関連マーカーは、メタボリックシンドロームと正の関連、1.0より小さいマーカーは、負の関連が見られたもの。
*年齢、性、地域、喫煙習慣、飲酒習慣、採血時の空腹時間、加えてメタボリックシンドロームの解析では身体活動量を、低身体活動の解析ではメタボリックシンドロームを統計学的に調整。

 

まとめ

本研究結果は、メタボリックシンドロームといくつかの血中炎症関連マーカーとの関連がみられましたが、低身体活動との関連はみられませんでした。先行研究と異なり、低身体活動と炎症マーカーとの関連が見られなかった理由のひとつとして、研究が実施された集団の特徴が、先行研究と異なることが考えられます。先行研究では、身体活動量が低いグループではメタボリックシンドロームの割合が高くなるといった、低身体活動とメタボリックシンドロームの相関が高い集団で研究が行われていましたが、本研究の対象集団では、低身体活動とメタボリックシンドロームとの間に相関がみられませんでした。本研究で低身体活動と炎症関連マーカーとの関連がみられなかったことから、低身体活動の健康への悪影響には、炎症を介したメカニズムによるものではない可能性が示唆されました。
メタボリックシンドロームや身体活動量と血中炎症関連マーカーとの関連を検討した研究は限られているためさらなる研究が必要です。

多目的コホート研究の参加者からご提供いただいた血液を用いた研究は、国立がん研究センターの倫理審査委員会の承認を得た研究計画をもとに、「疫学研究に関する倫理指針」や「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」などに則って実施されています。国立がん研究センターにおける研究倫理審査については、公式ホームページをご参照ください。

多目的コホート研究では、ホームページで保存血液を用いた研究のご紹介を行っております。

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