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現在までの成果

甘味飲料の摂取と大腸がんリスクとの関連について

―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告―

 

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防と健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。平成2年(1990年)と平成5年(1993年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、新潟県長岡、茨城県水戸、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の10保健所管内にお住まいだった方々のうち、平成7年(1995年)と平成10年(1998年)にアンケート調査に回答していただいた45〜74歳の男女約7万4千人を平成25年(2013年)まで追跡した調査結果に基づいて、甘味飲料の摂取と大腸がんの罹患リスクとの関連を調べました。その研究結果を専門誌に論文発表しましたので紹介します(Cancer Epidemiol Biomarkers Prev 2021年4月公開)。

甘味飲料の摂取は、大腸がんのリスク要因である体重増加や肥満、糖尿病などと関連していることが報告されています。甘味飲料と大腸がんリスクに関する研究は、主に欧米で行われていましたが、甘味飲料の摂取量や食事が異なるアジア人では、欧米の結果と異なることが推察されます。そこで日本人を対象とした本研究で、甘味飲料と大腸がんリスクとの関連を検討しました。

甘味飲料は、食事アンケート調査で、β-カロチン含有飲料、カルシウム飲料、缶コーヒー、100%りんごジュース、100%オレンジジュース、乳酸菌飲料、清涼飲料水、ドリンク剤の摂取量を算出し、「摂取しない」グループと、摂取している人を均等に「少ない」、「多い」の2つのグループに分け、3つのグループで、「摂取しない」と比較したその他のグループの、その後の大腸がん罹患リスクとの関連を調べました。解析には、年齢、地域、糖尿病の既往、体格、身体活動量、喫煙習慣、飲酒習慣、大腸がんのスクリーニング検査受診の有無、エネルギー、野菜、赤肉と加工肉、魚類の摂取量を統計学的に調整し、これらの影響をできるだけ取り除きました。

 

男女とも、甘味飲料は大腸がんの罹患リスクとは関連がみられなかった

平均して15年の追跡期間中に、1,648人が大腸がんと診断されました。男女とも、甘味飲料を摂取しないグループと比べて、摂取しているグループでの大腸がん罹患リスクとの関連はみられませんでした(図1)。しかし、部位別に関連をみたところ、結腸がんでは女性で甘味飲料を摂取しないグループと比べて、摂取量の多い(1日に134ml以上飲む)グループでは、1.36倍と統計学的に有意にリスクが高く、また、摂取するグループでの大腸がんの罹患リスクの増加を部位別にみると、近位結腸がんで統計学的有意にリスク上昇との関連がみられました(図2)。

図1.甘味飲料の摂取量と大腸がんリスク

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図2.女性の甘味飲料と大腸がんの部位別リスク

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この研究について

本研究は、甘味飲料の摂取と大腸がんリスクとの関連を検討した、アジアで初めての研究です。今回の研究結果から、男女とも、甘味飲料の摂取と大腸がん全体のリスクとの関連はみられませんでした。しかし部位別に見ると、女性において、結腸がん、特に近位結腸がんの罹患リスクが高いという関連がみられました。
甘味飲料と大腸がんリスクについて、部位別に検討した米国での先行研究では、甘味飲料との関連がみられなかったことが報告されていますが、本研究では、女性の結腸がんのリスク上昇と関連がみられました。先行研究と結果が異なった理由の1つとして、アジア人では、インスリン抵抗性への感受性が欧米人と比べて高いことが考えられました。また、部位別によって結果が異なるメカニズムはよくわかっていませんが、先行研究では、甘味飲料の摂取が腸内細菌叢に影響することが報告されており、腸内細菌叢は、大腸の部位によって大きく異なるため、甘味飲料の摂取が大腸がんに及ぼす影響も部位によって異なるのかもしれません。男女で結果に差がみられたのは、食事要因の影響が男女によって異なるためとも考えられます。
本研究の限界として、甘味飲料摂取量の把握が自己申告であることから、糖尿病患者や肥満者は糖質の摂取を制限していたことや摂取量を少なく報告した可能性を考慮できないことや、甘味飲料を摂取していない人は、大腸がんのスクリーニング検査をより受けていたことから、大腸がんと診断された人が多く、甘味飲料とがんとの関連が過小評価されている可能性などがあげられます。甘味飲料と大腸がんの部位別に検討した研究は少なく、今後もさらなる研究が必要です。

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