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多目的コホート研究(JPHC Study)

食事調査票から得られたポリフェノール摂取量の正確さとポリフェノールの主な摂取源について

―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告―

 

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防と健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。食生活と病気との関連を明らかにする研究では、1人1人の食生活を調べる方法の一つとして、食物摂取頻度調査票(FFQ)という比較的簡易なアンケートを用いて、各個人の習慣的な食品や栄養素の摂取量を推定しています。このFFQから推定した摂取量と病気との関連を調べるためには、摂取量がどのくらい正確に推定できているかを確認することが大切です。今回、多目的コホート研究の開始から5年後に用いられたFFQから、総ポリフェノールの摂取量を推定し、その正確さを調べた結果を専門誌で論文発表しましたので紹介します(J Nutr Sci. 2021年5月公開)。

 

ポリフェノールについて

ポリフェノールは、フェノール基を複数持つ化合物の総称であり、果物、野菜、豆類、緑茶、コーヒー、ココア、ワインなど、多くの植物由来の食品に含まれます。
ポリフェノールは、抗酸化作用、抗炎症作用などの機能性を有することから、がん、循環器疾患や認知症などの生活習慣病を予防することが期待されています。2017年に農研機構が機能性成分表を公開[機能性成分含有量データ(抜粋)]したことにより、どの食品にどれだけの総ポリフェノールが含まれているかが明らかとなり、日本人における総ポリフェノールの摂取量(以下、ポリフェノール摂取量)を推定することが可能となりました。しかし、ポリフェノール摂取量と生活習慣病等との関連を明らかにしていくには、その前に、この成分表を用いたFFQ由来のポリフェノール摂取量の推定方法の確からしさを検討する必要があります。

 

研究方法の概要

多目的コホート研究に参加した男女のうち、研究開始から5年後の調査で用いられたFFQに1年間隔で2度、さらに28日間または14日間の食事記録調査(DR)にご協力いただいた565人の男女を対象としました(コホートⅠは215名、コホートⅡは350名)。ポリフェノール摂取量をFFQとDRの2つの食事調査方法によって、それぞれ算出し、相関係数を計算しました。

 

ポリフェノールの主な摂取源

DRから算出されたポリフェノールの摂取量(中央値)は、コホートⅠでは、男性で1172mg/日、女性で1024mg/日、コホートⅡでは、男性で1061mg/日、女性で942mg/日であり、主な摂取源となっていた食品群は、コホートⅠ・Ⅱ・男女共通して、「非アルコール飲料」からの寄与が一番高く、ポリフェノール摂取量全体の約50%を占めていました。具体的な食品については、コホートⅠ・Ⅱとも、男女共通して、非アルコール飲料に含まれる「緑茶」からの寄与が最も高く、全体の30%以上を占めていました。緑茶に次いでポリフェノール摂取量が多かった食品として、コホートⅠの男性で「ビール」、「味噌」の順、コホートⅠの女性では「インスタントコーヒー」、「味噌」が続いていました(表1)。一方、コホートⅡの男性では、2位は「ビール」でしたが、3位が「醤油」と順位が少し異なっており、コホートⅡの女性でも、2位は「インスタントコーヒー」でしたが、3位が「醤油」となっていました(表1)。

表1.JPHC研究妥当性におけるポリフェノールの主な摂取源(コホート別)

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妥当性

FFQとDR、2種類の食事調査方法より推定したポリフェノール摂取量の相関係数(この値が1に近いほどFFQによる摂取量推計が確からしいことを示す)は、コホートⅠの男性で0.47、女性で0.37、コホートⅡの男性で0.44、女性で0.50でした(表2)。

 

再現性

また、再現性を確認するため、1年間隔で2回行ったFFQからポリフェノール摂取量を推定し、それらの結果が類似しているかを検討しました。2回測定の相関係数は、コホートⅠの男性で0.59、女性で0.46、コホートⅡの男性で0.51、女性で0.56でした(表2)。

表2.FFQの妥当性(DRとFFQの相関係数)、再現性(2回のFFQの相関係数)

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この研究結果からわかること

これらの結果から、FFQより推定したポリフェノール摂取量の妥当性と再現性は、疫学研究を行うために必要なある程度の正確さがあることが分かりました。また、日本人中高年におけるポリフェノール摂取量は、摂取源に多少の男女差があるものの、緑茶からの摂取が大きく寄与していることがわかりました。欧州の集団を対象とした先行研究では、ポリフェノールの摂取源として、コーヒー、紅茶、果物類摂取による寄与が高いことが報告されており、国によって摂取源が異なることがわかります。この結果は、今後、多目的コホート研究で、ポリフェノール摂取量とがん、脳卒中、心筋梗塞、糖尿病などとの関連を分析する際の重要な基礎資料となります。

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