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多目的コホート研究(JPHC Study)

甘味飲料と死亡リスクとの関連について

―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告―

 

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防や健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。平成7年(1995年)と平成10年(1998年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、東京都葛飾区、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の11保健所管内(呼称は2019年現在)にお住まいだった方々のうち、アンケート調査に回答していただいた45〜74歳の男女約7万人を、平成27年(2015年)まで追跡した調査結果に基づいて、甘味飲料の摂取量とその後の死亡リスクとの関連を調べた結果を専門誌に論文発表しましたので紹介します(Prev Med. 4月WEB公開)。

甘味飲料の摂取は、体重増加や糖尿病、がん、脳血管疾患の罹患などと関連していることが報告されています。欧米で行われた研究では、甘味飲料の摂取と死亡リスクとの関連が複数報告されている一方で、アジアで行われた研究では、関連がないことが報告されており、結果が一致していません。また、日本人を対象とした疫学研究はありませんでした。そこで、本研究では、甘味飲料の摂取量と死亡リスクとの関連について検討することを目的としました。

甘味飲料の摂取量は、食事アンケート調査で、清涼飲料水(コーラなど)、100%りんごジュース、100%オレンジジュース、缶コーヒー、乳酸菌飲料、β-カロチン含有飲料、カルシウム飲料、ドリンク剤の摂取量の合計で算出しました。甘味飲料の摂取量を少ない順に並べて、人数が均等になるよう5グループに分け、最も摂取量が少ないグループと比較して、その他のグループの、その後の全死亡およびがん、循環器疾患、心疾患、脳血管疾患、呼吸器系疾患、消化器系疾患による死亡リスクを調べました。解析では、年齢、性別、地域、身体活動量、高血圧の既往、体格、喫煙、飲酒、総エネルギー摂取量、コーヒー、緑茶の摂取量を統計学的に調整し、これらの要因による影響をできるだけ取り除きました。

 

甘味飲料の摂取量が多いほど、全死亡・循環器疾患・心疾患による死亡リスクが増加

平均して約17年の追跡調査中に、11,811人が死亡しました。死因別では、がんが4,713人、循環器疾患が2,766人、心疾患が1,412人、脳血管疾患が1,088人、呼吸器系疾患が888人、消化器系疾患が433人でした。

甘味飲料の摂取量が最も少ないグループと比較して、甘味飲料の摂取量が多いと、全死亡リスクが統計学的有意に増加していました。さらに、循環器疾患や心疾患による死亡においても、同様の関連がみられました。最も摂取量の多いグループにおいて、全死亡では1.15倍、循環器疾患では1.23倍、心疾患では1.35倍、死亡リスクが高くなりました。一方で、がん、脳血管疾患、呼吸器系疾患、消化器系疾患では、関連はみられませんでした(図1)。

図1.甘味飲料の摂取量と死亡別リスク

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(クリックで画像拡大)

※年齢、性別、地域、身体活動量、高血圧の既往、体格、喫煙、飲酒、総エネルギー摂取量、コーヒー、緑茶の摂取量で調整を行った。 

 

この研究について

今回の研究では、甘味飲料の摂取量が多いほど死亡リスクが高くなりました。また、循環器疾患や心疾患による死亡リスクにおいても、同様の関連がみられました。
本研究結果は、欧米の先行研究と同様でしたが、アジアからの先行研究とは異なっていました。その理由として、甘味飲料を摂取している割合の違いが考えられました。欧米の先行研究では、月に1度以上甘味飲料を摂取する割合が58-76%であったのに対して、アジアでの先行研究では26%でした。本研究では、月に1度以上甘味飲料を摂取する割合が85%であり、欧米の摂取割合に近かったと考えられます。また、甘味飲料の摂取により循環器疾患や心疾患による死亡リスクの増加がみられた理由として、甘味飲料は、血糖値やインスリン濃度を上昇させるグリセミック指数が高く、心血管系や代謝系の機能へ悪影響を及ぼす可能性などが考えられます。
限界として、甘味飲料の摂取量が自己申告であることや、研究開始時に慢性疾患のある参加者は甘味飲料の摂取量を少なく報告する傾向があることなどがあげられます。
今回得られた結果は、日本で初めての報告で、アジアからの報告も少ないため、甘味飲料の摂取とがんや死亡リスクとの関連を確認するためには、さらなる研究の蓄積が必要です。

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