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現在までの成果

女性関連要因と日常生活動作(ADL)の制限との関連について

―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告―

 

私たちは、いろいろな生活習慣病と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関連を明らかにし、日本人の生活習慣病予防と健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。平成2年(1990年)と平成5年(1993年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、東京都葛飾区、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の11保健所(呼称は2018年現在)管内にお住まいだった40~69歳の女性のうち、調査開始時と10年後(2000-2004年)に行ったアンケート調査に回答のあった39,248人の調査結果にもとづいて、女性関連要因と日常生活動作(ADL)の制限との関連を調べた結果を専門誌で論文発表しましたので紹介します。(J Obstet Gynaecol Res. 2021年9月WEB先行公開)

日常生活動作とは、日常生活を送るために最低限必要な動作のことであり、日常生活動作の制限は要介護につながること、また、死亡リスクが高まることが報告されています。これまでの研究によると、閉経などによる女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量の低下は骨粗しょう症や身体機能低下と関連することが示唆されていますが、女性関連要因と日常生活動作との関連については報告がありませんでした。

本研究では、10年後に行ったアンケート結果から、日常生活動作レベルに関する質問について、「屋内での生活はおおむね自分でできるが、介助なしには外出しない」またはそれより低いレベルと回答した「日常生活動作の制限あり(ADL制限あり)」と「日常生活動作の制限なし(ADL制限なし)」の2つのグループに分けました(表)。2つのグループ間で、調査開始時点、および10年後のアンケート結果から、女性関連要因(初潮年齢、月経周期、月経規則性、妊娠・出産経験と回数、初回妊娠・出産年齢、授乳経験、閉経の有無・種類と閉経年齢、女性ホルモン剤服用の有無)との関連を調べました。

表. 日常生活の状態とADL制限の定義

ADL制限 日常生活の状態
あり ・屋内での生活はおおむね自分でできるが、介助なしには外出しない
・屋内での生活は何らかの介助を必要とし、日中もベッド上での生活が主であるが、座位を保つことができる
・1日中ベッドで過ごし、排泄、食事、着替えの時に介助がいる
なし ・身体に特に障害はない
・身体に何らかの障害はあるが、日常生活はほぼ自分で出来、独力で外出する

 

 

閉経年齢と、妊娠・出産回数は、日常生活動作制限リスクと関連がみられた

アンケート調査に回答のあった対象者39,248人のうち、ADL制限ありと回答した方は592人でした。
閉経年齢に関して、標準的な閉経年齢である50-54歳よりも早く閉経したグループ(閉経年齢40-44歳)でも遅く閉経したグループ(閉経年齢55-60歳)でも、ADL制限を有するリスクは、それぞれ1.44倍、1.55倍高いことがわかりました(図左)。また、妊娠回数に関しては、回数が多いほどADL制限を有するリスクは低い傾向がみられ、妊娠回数0回に対して、2回および3回のリスクは約半分でした(図右)。その他の女性関連要因とADL制限とは関連はみられませんでした。

 

図 女性関連要因と日常生活動作の制限との関連

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年齢、地域、体格指数(Body Mass Index)、喫煙、飲酒、運動、病歴(がん、循環器疾患、脳血管疾患)、女性関連要因(閉経時年齢、調査開始時の月経周期規則性)で統計学的に調整
*統計学的に有意(P<0.05) 

 

今回の研究について

この研究で、閉経年齢が早い人と遅い人では日常生活動作制限のリスクが高いという結果が得られました。早期閉経は、心疾患等のリスクが高まることなどが報告されており、日常生活動作の制限につながった可能性が考えられます。また、これまでの研究で、閉経年齢が早く、エストロゲンにさらされる期間が短いと身体機能低下のリスクが高いことが報告されていることから、身体機能の低下がADL制限につながった可能性も考えられます。一方で、今回の研究では閉経年齢が遅い場合でも日常生活動作制限のリスクが高いという結果でした。閉経後のエストロゲンレベルが高いほうがフレイル(加齢などに伴い心身が弱くなる状態)のリスクが高いという報告もあり、この結果はエストロゲンに長くさらされることが身体機能の低下につながる可能性を示しています。しかし、閉経が遅くなること、ADL制限を有することの両方に共通する、今回の調査では尋ねていないほかの要因がある可能性もあり、この理由は明らかではありませんので、今後さらなる検討が必要です。
さらに、本研究では、妊娠・出産回数が多いと日常生活動作制限のリスクが低いという結果が得られました。妊娠・出産の回数が多いことが、ホルモンに関するがんなどの慢性疾患や、骨粗しょう症に伴う骨折などに対して予防的にはたらくことによって、日常生活動作制限のリスク低下につながった可能性が考えられます。
今回の研究では、女性関連要因と日常生活動作のレベルを、自己申告をもとに調査しており、女性関連要因や日常生活動作レベルが実際の状況と異なる場合があることが本研究の限界点です。
女性関連要因と日常生活動作と調べた研究がほとんどないため、さらなる研究の蓄積が必要です。

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