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現在までの成果

生活習慣と胆石との関連について

―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告―

 

私たちは、いろいろな生活習慣と、病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防と健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。平成2年(1990年)と平成5年(1993年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古の9保健所管内(呼称は2019年現在)にお住まいだった方々のうち、研究開始時と10年後調査のアンケート全てにご回答いただいた男女約6万人の方々を対象に、生活習慣と胆石発症との関連を調べた結果を専門誌で論文発表しましたので紹介します(Dig Dis. 2021年5月Web先行公開)。

胆石とは、主に、胆のうに結石ができた状態で、日本人成人の3%に胆石があると言われています。胆石の多くは症状の無いまま経過するものの、年間1〜5%の確率で胆石発作による上腹部の痛みなどの症状が生じます。胆石に対しての内服治療は効果が限られているため、症状を伴う胆石の治療には一般的に胆のう摘出術が必要となる事が多いことが現状です。

スウェーデンの先行研究から、胆石発症のリスクの大部分は環境要因が関与していることが知られています。欧州の先行研究から、胆石のリスク要因として、年齢、女性であること、経口避妊薬の摂取や肥満などが示唆されています。しかし、生活習慣や体格の異なる日本人での研究は行われていませんでした。そのため、本研究では、日本人における胆石のリスク要因となる生活習慣について調べました。

生活習慣は、調査開始時のアンケート結果から、これまで、胆石のリスク要因としてあげられていた喫煙・飲酒習慣、体格(body mass index, BMI, kg/m2)、自覚的ストレスや、女性関連要因、糖尿病の既往の有無などを用いました。また、胆石や胆のう摘出術は、10年後のアンケート調査から、それぞれ、「医師から胆石があると診断されたと回答した人」、「胆のう(胆石)の手術の経験があると回答した人」で有無をわけました。それらをもとに、生活習慣と胆石の既往(医師からの診断)や胆のう摘出術(胆のう(胆石)の手術)のリスクとの関連について検討しました。その際、検討した要因以外の要因(年齢、性別、BMI、体重変化、喫煙習慣、飲酒習慣、運動量、糖尿病の既往、睡眠時間、自覚的ストレス、地域、女性では、初潮年齢、月経状態、ホルモン内服歴、妊娠・分娩回数、授乳歴)を統計学的に調整しました。

 

多くの生活習慣が、胆石や胆のう摘出術と関連

調査開始時から10年後のアンケート調査までに、3,092人 (5.0%) が胆石の既往があると回答し、 729 人(1.2%) が胆のう摘出術を受けたと回答しました。生活習慣との関連を調べた結果、加齢、高BMI、糖尿病の既往歴が、男女ともに胆石のリスク要因であることが明らかになりました(図1、2)。さらに、男性では、追跡期間中の5kgを超える体重増加もしくは減少と自覚的ストレスが胆石のリスク要因であった一方で、アルコール摂取は、胆石のリスクが低いことと関連していました(図1)。女性では、追跡期間中の5kgを超える体重増加、喫煙、閉経、高コレステロール血症の服薬が胆石のリスク因子で、初潮が遅いことは胆石のリスクが低いことと関連していました。(図2)。胆のう摘出術のリスクにおいても、男女とも同様の結果でした。

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今回の研究から分かること

今回の結果から、欧米と同様に、日本人においても、加齢、高BMI、糖尿病の既往が、男女ともに胆石のリスク要因であることがわかりました。一般的に、胆石ができる要因の1つとして、主にコレステロールを体外への排出する働きを担っている胆のうの働きが悪くなり、胆汁中のコレステロール濃度が高くなり結晶化することで、胆石ができることが知られており、これらの要因が胆汁中のコレステロール濃度の増加や胆汁を分泌する胆のうの収縮能の低下を引き起こすことで、胆石形成や胆のう摘出術の施行につながったと考えられます。
そのほか、今回の研究では、男性におけるストレス、女性における初潮年齢と胆石の関連について初めて明らかとなりました。ストレスで見られた胆石のリスク上昇は、胆のうの働きが悪くなることが一つの要因と考えられました。また、エストロゲンはコレステロール産生を促進しますが、初潮年齢が遅いことは相対的にエストロゲンにさらされる期間が減ると考えられ、胆石のリスクの低下につながったものと考えられます。
さらに、男性では、アルコールは胆石のリスクの低下と関連していましたが、アルコールは胆のうの働きを促進することなどから予防的に働いたことが考えられました。
男女でそれぞれ異なった要因で胆石のリスクと関連がみられた理由には、喫煙や飲酒の割合が男性で多いなどの生活習慣の違いによる可能性が考えられました。本研究では、胆石について自記式質問票から情報を得ており、すべての対象者が臨床検査を受けているわけではないことが限界点としてあげられます。

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