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現在までの成果

複数の血中炎症関連マーカーと膵がん罹患との関連について

―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告―

 

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防と健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。平成5年(1993年)に、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の6保健所管内(呼称は2019年現在)にお住まいだった約2万3千人の方を、平成22年(2010年)末まで追跡した結果に基づいて、複数の血中炎症関連マーカーと膵がん罹患との関連について検討しました。その研究結果を論文発表しましたので紹介します(Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 2021年10月Web先行公開)。

膵がんは、日本におけるがん死亡数の第4位となっています(参考:がん情報サービス 最新がん統計)。膵がんの危険因子として、慢性膵炎、喫煙、糖尿病、肥満が知られており、炎症は膵臓の発がんに関連する要因の一つであると考えられています。しかしながら、これまで複数の血液中の炎症マーカーを一度に幅広く評価して、膵がんリスクとの関連を調べた研究はありませんでした。そこで、近年開発された複数の血中炎症関連マーカー濃度を一度に測定する技術を用い、健常集団から収集された血液を用いて、62の炎症関連マーカー(サイトカイン、可溶性受容体、急性期たんぱく質、増殖因子)の濃度と、その後の膵がん罹患との関連を調べました。

 

保存血液を用いた、症例コホート研究

多目的コホート研究のベースライン調査アンケートに回答のうえ、健診などの機会に血液を提供してくださった40~69歳の男女約2万3千人の方々を対象に追跡調査を行いました。研究開始から平成22年(2010年)末までに111人の膵がん罹患が確認されました。これに対し、同じ約2万3千人の方々の中から、774人を無作為に選んで対照グループに設定しました。今回の研究では、がんに罹患する前の保存血液を用いて、炎症関連マーカー濃度の測定を行いました。

 

炎症関連マーカーと膵がん罹患との関連

サイトカインであるCCL8/MCP2と膵がんとの間に統計学的有意な関連がみられましたが、他のマーカーとは関連はみられませんでした(図)。CCL8/MCP2濃度によって、人数が均等になるように対象者を4つのグループに分けた結果、濃度が最も低いグループと比べて、濃度が最も高いグループの膵がん罹患リスクは、2倍でした(傾向性のP値 0.048)。しかしながら、複数のマーカーを一度に調べているため統計学的に有意な関連が出やすいことを考慮した解析(false discovery rateで調整した解析)では、いずれのマーカーも統計学的に有意な関連はみられませんでした。

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図 血中炎症関連マーカーと膵がん罹患との関連

・各炎症関連マーカーの血中濃度が最も低いグループを基準とした、最も高いグループの膵がん罹患のハザード比を示す。
・年齢、性、地域、膵がんの家族歴、糖尿病の既往歴、体格、喫煙習慣、飲酒習慣、身体活動量で統計学的に調整した。

 

まとめ

これまで他のコホート研究でも、いくつかの血中炎症マーカーと膵がん罹患リスクとの関連が検討されていますが、はっきりとした関連を示した研究はほとんどありません。CRPについては、4件の報告のうち1件でのみ、その後の膵がん罹患のリスク増加との関連が報告されていますがIL-6やTNF-αR2については、関連が認められていません。
本研究では、妥当性が検討された方法を用いて、広範な血中炎症マーカーと膵がんリスクとの関連を検討しました。本研究の結果は、血中CCL8/MCP2濃度と膵がんリスクとの間の正の関連を示唆したものの、統計的に有意ではありませんでした。しかしながら、このマーカーは今後の研究の候補になるかもしれません。膵がんのリスクにおける局所的および全身的な炎症の役割を探るためには、他の集団でも同じような結果が得られるかどうか、さらなる検討が必要です。

多目的コホート研究の参加者からご提供いただいた血液を用いた研究は、国立がん研究センターの倫理審査委員会の承認を得た研究計画をもとに、「疫学研究に関する倫理指針」や「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」などに則って実施されています。国立がん研究センターにおける研究倫理審査については、公式ホームページをご参照ください。

多目的コホート研究では、ホームページで保存血液を用いた研究のご紹介を行っております。

CCL: C-C motif ligand; CRP; C-reactive protein; IL: interleukin; MCP: monocyte chemoattractant protein; JPHC: Japan Population-based prospective cohort study; TNF-αR2: tumor necrosis factor-alpha receptor 2.

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