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多目的コホート研究(JPHC Study)

甘味飲料摂取と腎がんおよび膀胱がんのリスクとの関連について

―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告―

 

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防や健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。平成2年(1990年)と平成5年(1993年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の10保健所管内(呼称は2019年現在)にお住まいだった方々のうち、平成7年(1995年)と平成10年(1998年)アンケート調査にご回答くださった、45~74歳の男女約7万3千人の方々を、平成25年まで追跡した結果に基づいて甘味飲料の摂取量と腎がん・膀胱がんとの関連を調べた結果を論文発表しましたので紹介します。(Sci Rep. 2021年11月Web先行公開)

近年、腎がんと膀胱がんの罹患率は世界的に増加していますが、生活習慣や食事と腎がん・膀胱がんとの関連を調べた報告は少なく、よくわかっていません。多量の果糖(糖の一種)が含まれる甘味飲料は、食後高血糖、糖尿病、高血圧症、肥満、腎機能低下と関連しており、これらは、腎がんのリスクとして報告されています。また、甘味飲料は、血糖値の上がりやすさを示す指標であるグリセミック指数が高く、グリセミック指数は膀胱がんのリスクであるという報告もあるため、甘味飲料との関連もうたがわれます。しかし、甘味飲料の摂取量と腎がん及び膀胱がんのリスクの関連について調べた疫学研究は少なく、結果も一致していません。そこで本研究では、がんの既往のない73,024名を対象として、甘味飲料摂取と腎がんおよび膀胱がんの罹患リスクとの関連について調べました。
甘味飲料の摂取量は、調査開始時に行ったアンケート調査の回答から、甘味飲料の摂取量を算出し、男女別に甘味飲料を「摂取しないグループ」、「摂取量が少ないグループ」、「多いグループ」に分けました。摂取しないグループを基準として、その後の腎がんと膀胱がんに罹患するリスクを比べました。また、摂取量が100ml/日ずつ増加したときの腎がん・膀胱がんのリスクについても検討しました。解析では、年齢、地域、体格(BMI)、高血圧の既往、糖尿病の既往で統計学的に調整を行い、これらの影響をできるだけ取り除きました。

 

甘味飲料の摂取は追跡後3年間の罹患者を除いた場合に、女性における腎がん・膀胱がんの罹患リスク増加と関連がみられた

平均15.8年の追跡期間中に、169人が腎がんに、297人が膀胱がんに罹患しました。甘味飲料の摂取量別に検討した結果、男女とも、腎がん及び膀胱がんとは関連がありませんでした(図1)。
一方で、がん診断前の何らかの体調不良や疾患のために、甘味飲料の摂取量が減った人の影響などを除くため、調査開始後3年間のうちにがんに罹患した方を除いて検討した結果、甘味飲料摂取量が1日あたり100ml増加すると、女性における腎がんの罹患リスクは1.11倍、膀胱がんの罹患リスクも同様に1.11倍でした(図2)。

図1. 甘味飲料の摂取量と腎がん・膀胱がんのリスク


図2. 甘味飲料の摂取量が100ml/日ずつ増加した場合の腎がん・膀胱がんリスク
※追跡開始後3年以内の腎がん・膀胱がん罹患を除く

 

今回の結果について

甘味飲料と腎がんに関するこれまでの報告では、統計学的有意な関連はみられておらず、本研究も同様の結果でした。しかしながら、がん診断前の体調変化などのため甘味飲料の摂取量が変わっている可能性や、肥満・高血圧・糖尿病の方では甘味飲料の摂取を少なめに答える可能性を除外するために、アンケート回答後3年以内のがん罹患を除いた場合に、甘味飲料の摂取量が増加するほど腎がんリスクが1.11倍増加する関連がみられました。
一方、甘味飲料と膀胱がんに関する先行研究では甘味飲料とリスク増加との関連が報告されており、本研究でも、追跡開始後3年間のがんに罹患した方を除外した場合に、甘味飲料摂取量が増加するほど膀胱がんのリスクが1.11倍増加する関連がみられました。
これらのことから、本研究では、腎がんも膀胱がんも、アンケート回答時に、がん診断前の体調の変化や、糖尿病などのリスクを持った方では、甘味飲料の摂取量を少なめに回答していたことなどの影響により全体では関連がみられず、アンケート回答後3年以内のがん罹患を除いた場合に、腎がん・膀胱がんとの関連がみられたことが考えられました。
今回の研究では、甘味飲料の摂取量の把握が自己申告のアンケートであること、追跡期間中の摂取量や生活習慣の変化は考慮できていないことなどが限界点として挙げられます。

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