トップ >多目的コホート研究 >現在までの成果 >趣味と循環器疾患発症リスクとの関連

現在までの成果

趣味と循環器疾患発症リスクとの関連

―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告―

 

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防に役立てるための研究を行っています。平成5年(1993年)に、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古の5保健所管内(呼称は2019年現在)にお住まいで、アンケート調査にご協力いただいた方々のうち、循環器疾患とがんの既往のない男女約6万人を、平成24年(2012年)まで追跡した調査結果にもとづいて、趣味と循環器疾患発症リスクとの関連を調べました。その研究結果を専門誌で論文発表しましたので紹介します(Atherosclerosis 2021年9月公開)。

趣味は、楽しむことを目的として余暇に取り組む活動と定義されており、これまでの研究から、身体的健康や心理的健康の改善と関連することが報告されています。近年、趣味は循環器疾患のリスクを低下させる要因としても注目が集まっていますが、大規模なコホート研究は少なく、その関連についてはよくわかっていません。そこで、私たちは、日本人を対象とした大規模なコホート研究において、趣味と循環器疾患との関連を明らかにすることを目的としました。

調査開始時のアンケート結果から、「趣味はありますか?」という質問に対して、「ない」、「ある」、「たくさんある」の3つのグループに分け、「ない」と答えたグループを基準として、その他のグループのその後の循環器疾患の発症リスクを比べました。解析では、年齢、体格、性別、地域、職業、同居家族の有無、体格、喫煙状況、飲酒状況、余暇の身体活動、糖尿病既往、高血圧既往、高コレステロール血症既往、降圧剤の服薬、血糖降下剤の服薬、高コレステロール血症の服薬、循環器疾患の家族歴、日常的なストレスの程度、主観的な生活の楽しさの程度について統計学的に調整し、これらの影響をできる限り取り除きました。

 

趣味が多い人では、全循環器疾患(虚血性心疾患・脳卒中)の発症リスクが低い

平均16.3年の追跡調査中に、男女計56,381人のうち、3,685人が循環器疾患を発症しました。そのうち、虚血性心疾患を発症したのは940人、脳卒中を発症したのは2,839人でした。

趣味の有無によって循環器疾患の発症リスクを比べてみると、趣味がないグループに比べ、趣味のあるグループの循環器疾患発症のリスクは10%低く、趣味がたくさんあるグループでは20%低い結果でした(図)。脳卒中の発症では、趣味があるグループでリスクが13%低く、趣味がたくさんあるグループではリスクが20%低い結果でした。また、虚血性心疾患については、趣味がたくさんあるグループではリスクが19%低い結果でしたが、統計学的に有意な関連はみられませんでした(図)。

414_1

図. 趣味の有無による全循環器疾患、虚血性心疾患、脳卒中の発症リスク

 

この研究結果について

本研究の結果から、趣味を持つことは、全循環器疾患の発症リスク、特に脳卒中の発症リスクの低下に働く可能性が示されました。
先行研究では、趣味がある人では、うつ症状や精神的健康状態低下のリスクが低かったことが報告されています。精神状態が低い状態(ストレスや精神的苦痛)は、循環器疾患のリスクとなる心拍数の増加、規則的な拍動の乱れ、血圧上昇、血管内皮機能障害を引き起こすこと、さらにストレスにより分泌されるホルモンである血中コルチゾール濃度が増加することが報告されています。そのため、趣味を持ち、精神的に良い健康状態が保たれることによりこれらの症状が抑えられ、循環器疾患に対して予防的に働く可能性が考えられました。

今回の研究では、趣味の有無とその後の循環器疾患の発症について調べましたが、社会的支援やうつ症状などの健康状態を考慮できていないことや、趣味の具体的な内容については把握できておらず、具体的な趣味の種類と循環器疾患の発症リスクとの関連について分からないことなどが限界としてあげられます。
本研究では、日本で初めて趣味と循環器疾患の発症リスクとの関連を明らかにしましたが、海外からの報告も少なく、今回の結果を確認するためには、さらなる研究の蓄積が必要です。

上に戻る