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現在までの成果

家族構成とうつ病との関連について

―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告―

 

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防と健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。平成2年(1990年)に長野県佐久保健所管内の南佐久郡8町村(1990年時点)にお住まいだった、40~59歳の約1万2千人のうち、1990年に回答したアンケートデータがあり、かつ、平成26-27年(2014-15年)に行った「こころの検診」に参加した1254人の追跡調査にもとづいて、家族構成(配偶者・こども・親との同居)と、うつ病との関連を調べた結果を専門誌で論文発表しましたので紹介します(Transl Psychiatry. 2022年4月公開)。

近年、メンタルヘルスの問題、特にうつ病は社会的に重要な問題となっています。また、世界では多くの国で、婚姻状況や出生数などの変化により家族構成が変わってきており、日本ではその変化が顕著です。家族構成とうつ病の関連について、欧米からの多くの先行研究において、一人暮らしがうつ病のリスクとなることが報告されていますが、どのような家族構成がうつ病と関連しているのかという報告はほぼありませんでした。さらに、これらの先行研究のほとんどが、うつ病を自己申告のアンケートによって評価しており、精神科医が診断したうつとの関連を検討した研究はありませんでした。そこで私たちは、 一般集団における家族構成(配偶者・こども・親との同居)と精神科医により診断されたうつ病との関連を調べました。

調査開始時(1990年)に実施したアンケートにおける同居家族の有無に関する質問の回答結果から、家族構成を、配偶者との同居、こどもとの同居、親との同居で分け、その後のうつ病の発症との関係を調べました。
解析では、年齢、性別、喫煙状況、飲酒状況、睡眠時間、職業、教育歴、既往歴(がん、脳卒中、心筋梗塞、糖尿病)について統計学的に調整し、これらの影響をできるだけ取り除きました。

 

こどもと同居しているグループでうつ病のリスクが低下

こどもと同居しているグループでうつ病のリスクが低下
1254人のうち、105人が精神科医によってうつ病と診断されました。解析の結果、こどもと同居しているグループは、こどもと同居していないグループに比べて、うつ病のリスクが、参加者全体で47%低く、男性では58%低くなっていました。女性では統計学的に有意なリスク低下は認められませんでした。これらの関連は、配偶者との同居と親との同居をさらに調整した後も変わりませんでした。
一方で、そのほかの家族構成(配偶者との同居、親との同居)とうつ病のリスクとの間に統計学的有意な関連は認められませんでした。

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図.同居家族の形態とうつ病リスク

 

こどもとの同居とうつ病

本研究では、こどもとの同居がうつ病の発症リスクを低下することが示されました。厚生労働省白書によると、日本人の老後の不安の内容は、第1位が「健康上の問題」、第2位が「経済上の問題」であることが報告されています。1970年代以降、一人暮らしの世帯や高齢の親と同居している世帯の割合が増加していますが、 こどもとの同居により、その後の社会的および経済的支援を受けられやすく、ストレスの緩和や、うつ病の予防につながった可能性があります。

これまでの先行研究で、一人暮らしがうつ病のリスクであることは多くの研究で報告されていましたが、本研究では、研究参加者の中に一人暮らしの方の人数が少なく、一人暮らしとうつ病の発症リスクの関係については調べることができませんでした。本研究では、該当地域の14%の対象者しか調査に参加していないため、示された結果は一般的な集団と異なる可能性があります。また、本研究では、精神疾患の家族歴や、社会経済状況の中でも重要とされる収入などの情報は収集していなかったため、考慮できていない項目があり、このことが、今回の結果に影響している可能性があります。今後はそれらを考慮した、さらなる研究結果の蓄積が必要です。

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