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現在までの成果

飲酒と膵がん罹患の関連について

―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告―

 

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防と健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。平成2年(1993年)と平成5年(1993年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古の9つの保健所(呼称は2019年現在)管内にお住まいだった40~69歳の方々のうち、生活習慣に関するアンケート調査に回答いただき、がんの既往がなかった男女95,812人を、平成25年(2013年)まで追跡した調査結果にもとづいて、飲酒と膵がん罹患との関連を調べた結果を専門誌で論文発表しましたので紹介します(Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 2022年9月Web先行公開)。

現在までの研究から、膵がん罹患のリスク要因として、喫煙、糖尿病や慢性膵炎の既往歴、膵がんの家族歴などが明らかになっています。飲酒と膵がんとの関連については、飲酒量、特に多量飲酒との関連を示すいくつかの研究結果が報告されていますが、これまでに得られている研究結果は一致していません。そこで、私たちは、飲酒量や飲酒習慣と、その後の膵がんの罹患との関連を調べました。

調査開始時のアンケートにおける、飲酒習慣に関する回答から、飲酒量をエタノール量(g)で換算した上で、男性を「飲まない」「時々飲む(月に1~3日)」「週149g以下」「週150~299g」「週300~449g」「週450g以上」の6つのグループに、女性を「飲まない」「時々飲む(月に1~3日)」「定期的に飲む」の3つのグループに分け、「飲まない」グループを基準にして、その他のグループとその後の膵がんの罹患との関連を検討しました。
また、飲酒習慣が変わらないグループの検討として、調査開始時、5年後調査時共に「飲まない/時々飲む(月に1~3日)」「週299g以下」「週300g以上」と回答した男性に限定した解析も行いました。さらに、喫煙の影響を考慮し、喫煙状況別の解析も行いました。
解析では、膵がんに関連する飲酒以外の要因(年齢、地域、糖尿病の既往の有無、体格 (BMI)、がんの家族歴の有無、コーヒー摂取頻度、喫煙量、フラッシング反応の有無、運動頻度)を統計学的に調整し、これらの違いによる影響をできるだけ取り除きました。
※フラッシング反応=お酒を飲んだ時に顔が赤くなる反応

 

5年間飲酒習慣が一定の男性で、飲酒量が多いほど膵がんの罹患リスクが高くなることが示された

平均20.6年間の追跡期間中に、男性約4.6万人、女性約5.0万人のうち、それぞれ315人および283人が膵がんと診断されました。解析の結果、男性および女性のいずれにおいても、調査開始時の飲酒量と膵がんの罹患リスクとは統計学的有意な関連はみられませんでした(図1)。一方で、調査開始時からの5年間に飲酒習慣が変化しなかった男性に限定した場合、飲酒量が多いグループにおいて膵がんの罹患リスクが統計学的有意に高いことが示され、特に非喫煙者において、その傾向が顕著にみられました(図2)。

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図1.飲酒量と膵がん罹患リスクとの関連

 

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図2.5年間の飲酒習慣と膵がん罹患リスクとの関連(男性)

 

今回の結果から分かること

酒類に含まれるエタノールは、肝臓内で酵素によってアセトアルデヒドに分解され、アセトアルデヒドは膵がん罹患のリスク因子であるとの報告があります。しかし、今回の研究では、調査開始時の飲酒量と膵がん罹患リスクの関連は、男女共にみられませんでした。海外の複数の疫学研究をまとめたメタアナリシスでは、多量飲酒と膵がん罹患リスクの関連を示す報告があり、日本では海外に比べて多量飲酒をする人の割合が相対的に少ないため、本研究では飲酒と膵がんリスクの関連が示されなかった可能性があります。
その一方で、5年間飲酒習慣が変わらなかった男性でのみ、飲酒量の多いグループで膵がん罹患リスクが統計学的有意に増加することが示されました。飲酒習慣が変わらなかった男性に限定した場合は、飲酒が膵がん罹患リスクに関連していることが示されました。特に、非喫煙者男性ではその傾向が顕著に認められました。飲酒習慣の変化による影響が除外されたことによって関連が示された可能性が考えられますが、各グループの人数が少ないこともあり、今後もさらに継続して評価をする必要があります。
今回の研究では、膵がんの症例数が少ないこと、解析時の調整に用いた他の生活習慣の変化が検討されていないことなどが限界として挙げられます。
これら飲酒と膵がんとの関連については、過去の疫学研究も含めて一貫しない結果が報告されており、今回の結果を確認するためには今後のさらなる研究が必要です。

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