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現在までの成果

LPA-LPAL2遺伝子領域に見られる遺伝子多型とがん罹患およびがん死亡との関連

―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告―

 私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防と健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。平成2年(1990年)と平成5年(1993年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古の9保健所管内(呼称は2019年現在)にお住まいだった40~69歳の方々のうち、調査開始時のアンケート調査への回答と血液の提供にご協力下さった約3万4千人の男女から約1万人をランダムサンプリングし、LPA-LPAL2遺伝子領域に見られるDNA配列の個人差(遺伝子多型)を測定しました。その結果を用いて、がん罹患およびがん死亡との関連を検討した成果を、専門誌で論文発表しましたので紹介します(Cancer Epidemiol. 2023年8月公開)。

 高リポプロテイン(a)血症は、循環器疾患の確立したリスク要因ですが、がんとの関連については様々な研究結果が報告されています。本研究では、リポプロテイン(a)の遺伝子LPAとその近くに位置する遺伝子LPAL2に見られる25個の遺伝子多型に着目し、4つの遺伝形式(遺伝子型モデル、アレル加算型モデル、優性モデル、劣性モデル)注1)を仮定して、がん罹患およびがん死亡との関連を探索的に検討しました。

注1)遺伝子上のある遺伝子座を占める塩基配列のことをアレルと言います。同じ遺伝子座を占めるアレルに複数の種類がある場合、遺伝子多型が見られると言います。遺伝子多型が見られる場合、主なアレルと副のアレルが存在します。ここで、遺伝子多型Xの主なアレルをA、副のアレルをBとします。ヒトには、父親由来と母親由来の2つのアレルがあるため、遺伝子多型XにはAA/AB/BBで表される3種類の遺伝子型が存在します。遺伝子型モデルでは、AAを基準に、ABとBBの健康影響をそれぞれ評価します。アレル加算型モデルでは、副のアレルであるBが1個増えるごとの健康影響を評価します。優性モデルでは、副のアレルであるBが1個以上あると健康影響を与えると仮定し、AAを基準にAB+BBの健康影響を評価します。劣勢モデルでは、副のアレルであるBが2個揃った時に健康影響を与えると仮定し、AA+ABを基準にBBの健康影響を評価します。

研究方法の概要

 本研究で対象とした約1万人を平成21年(2009年)まで追跡したところ、1,093人のがん罹患と433人のがん死亡が把握されました。解析においては、性別、年齢、居住地域、BMI、喫煙状況、アルコール摂取量を統計学的に調整し、これらの要因による結果への影響をできる限り取り除いたうえで、がんリスクを推定しました。本研究では一度に25個の遺伝子多型を探索的に評価するため、P< 0.002(= 0.05/25)を統計学的有意としました。

 

LPA-LPAL2遺伝子領域に見られる遺伝子多型とがん罹患およびがん死亡との間に関連は見られなかった 

 図1に示すように、LPA-LPAL2遺伝子領域に見られる遺伝子多型とがん罹患およびがん死亡との関連を調べた結果、4つの遺伝形式(遺伝子型モデル、アレル加算型モデル、優性モデル、劣性モデル)の何れにおいても、P< 0.002を示す統計学的有意な遺伝子多型は観察されませんでした。がん罹患との間には、劣性モデルにおいてP< 0.05と統計学的有意でないながら関連が示唆される遺伝子多型が2つ(rs1652507とrs783149)観察されました。 

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図1. LPA-LPAL2遺伝子領域に見られる遺伝子多型とがん罹患およびがん死亡との関連

 

まとめ 

 本研究において、リポプロテイン(a)の遺伝子LPAとその近くに位置する遺伝子LPAL2に見られる25個の遺伝子多型は、がん罹患およびがん死亡との間に明らかな関連を示しませんでした。LPA-LPAL2遺伝子領域に見られる遺伝子多型によって、血中のリポプロテイン(a)濃度がある程度規定されているという報告をもとにがん罹患およびがん死亡との関連を検討しましたが、本研究で検討した25個の遺伝子多型は血中のリポプロテイン(a)濃度にそれほど大きな影響を与えていなかった可能性があります。

 また、本研究では、比較的頻度の高い部位のがん(胃・大腸・肺・前立腺・乳房)についても検討しましたが、全がん同様、P< 0.002を示す統計学的有意な遺伝子多型は観察されませんでした。ただし、がんの部位別検討では症例数が少なくなるため、統計学的な検出力が十分でなかった可能性があります。がんの部位別検討は、より大規模な集団で追試される必要があります。

 研究用にご提供いただいた血液を用いた研究の実施にあたっては、具体的な研究計画を国立がん研究センターの倫理審査委員会に提出し、ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針について審査を受けてから開始します。今回の研究もこの手順を踏んだ後に実施いたしました。国立がん研究センターにおける研究倫理審査については、公式ホームページをご参照ください。
 多目的コホート研究では、ホームページに多層的オミックス技術を用いる研究計画のご案内遺伝子情報に関する詳細も掲載しています。

 

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