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多目的コホート研究(JPHC Study)

食物繊維摂取量と認知症リスクとの関連

―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告―

 私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防と健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。平成5年(1995年)と平成8年(1998年)に、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、高知県中央東の5保健所(名称は2025年現在)管内にお住まいだった方々のうち、調査開始から5年後のアンケートに回答いただいた45~74歳の約4万1000人の男女を平成28年(2016年)まで追跡した調査結果にもとづいて、食物繊維摂取とその後の介護保険の要介護認定情報から把握した要介護認知症(以下、認知症)との関連を調べました。その結果を論文発表しましたので、ご紹介します(J Atheroscler Thromb. 2026年1月Web先行公開)。

 これまでに食物繊維の摂取が多いほど、循環器疾患、2型糖尿病、がんのリスクが低いことが報告されており、認知症にも関連がある可能性が考えられていましたが、食物繊維摂取と認知症との関連を調べた疫学研究はこれまでに1つのみでした。また、摂取源別の食物繊維に注目した研究はなく、エビデンスが求められていました。そこで、本研究では食物繊維摂取量および摂取源別の食物繊維摂取量とその後の認知症リスクとの関連を明らかにすることを目的としました。

 

研究方法の概要

 妥当性の確認された食物摂取頻度調査票から、食物繊維の1日当りの摂取量を計算し、人数が均等になるよう4つのグループに分けました。摂取量が最も少ないグループを基準として、その他のグループにおけるその後の認知症リスクを男女別に調べました。さらに、摂取源別(穀類、いも類、豆類、野菜類、果物類)の食物繊維の摂取量と認知症との関連も調べました。解析では、年齢、地域、喫煙、飲酒、身体活動量、総エネルギー摂取、魚介類摂取、食塩相当量を統計学的に調整し、これらの違いが及ぼす影響を統計学的にできるだけ取り除きました。

 

食物繊維摂取量が多いほど認知症リスクは低い

2006年から2016年までの追跡期間中(中央値9.4年)の要介護認定情報から、4,910人が認知症と診断されていることを確認しました。食物繊維総量の摂取量が最も少ないグループと比較して、最も摂取量の多いグループの認知症リスクは、男性で14%、女性で18%、統計学的有意に低いことが明らかになりました(図1)。水溶性食物繊維、不溶性食物繊維に分けて調べても同様の結果でした。食物繊維の摂取源別では、穀類、いも類、野菜類、果物類からの食物繊維摂取量が多いほど認知症リスクが低いことが明らかになりました。豆類からの食物繊維摂取量と認知症リスクとの関連はみられませんでした(図2,3)。

研究の結果から

 食物繊維摂取量が多いほど認知症リスクが低いことが示されました。また、豆類を除く各摂取源からの食物繊維摂取量が多いほど認知症リスクが低いことが示されました。これまでの先行研究は日本からの報告の1編しかありませんが、同様の結果であり、食物繊維摂取量が多いほど認知症リスクが低いことが報告されています。この結果は、食物繊維の摂取による、肥満、高血圧、脂質異常症、糖尿病といった動脈硬化の危険因子の発症の抑制効果が、認知症発症リスクが低いことと関連したと考えられます。また、認知症の患者では、炎症をきたす腸内細菌が増加していて、腸で起きた炎症が血液を介して神経細胞に波及し、認知症につながる(腸脳連関)と考えられています。食物繊維摂取は炎症を引き起こす腸内細菌を減少させるとの動物実験からの報告があるので、この機序も、認知症リスクを抑制する可能性として考えられます。

 今回の研究では、食物繊維摂取量の測定誤差の可能性や、経済状況など未測定のその他の因子の影響を除ききれていない可能性などが限界点としてあげられます。

 

図1. 食物繊維摂取量と認知症リスクとの関連

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図2. 摂取源別の食物繊維摂取量と認知症リスクとの関連(男性)

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図3. 摂取源別の食物繊維摂取量と認知症リスクとの関連(女性)

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