多目的コホート研究(JPHC Study)
生活リズムの不規則さと全死亡、病気による死亡、自殺、事故死の関連について
―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告―
私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防と健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。平成7年(1995年)と平成10年(1998年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、東京都葛飾区、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の11保健所管内にお住まいだった45~74歳の方々のうち、アンケート調査で毎日の生活の規則性に関する質問に回答した男女98,349人を最長19年間追跡した調査結果にもとづいて、毎日の生活の不規則さと全死亡・病気による死亡・自殺・事故死との関連を調べた結果を専門誌で論文発表しましたので紹介します(BMJ Public Health. 2026年7月公開)。
睡眠や食事、人との交流などの日々の活動は、体内時計を整える手がかりとなります。そのため、こうした活動の時刻や生活の流れ(生活リズム)が不規則になると、睡眠・覚醒リズムが不安定になり、心身の健康や認知機能に影響する可能性があります。これまで、生活リズムの不規則さや交代制勤務は、全死亡や病気による死亡(病死)、自殺、事故などと関連する可能性が報告されてきました。しかし、一般住民を対象として、生活リズムの規則性と、全死亡、病死、自殺、事故死との関連を、同じ集団で長期間にわたり調べた研究は限られていました。そこで本研究では生活リズムの規則性とこれらの死亡との関連を調べました。
生活リズムは、対象者に実施したアンケートにおける「あなたの毎日の生活は規則正しいですか?」という質問を用いて評価しました。「規則正しい」と回答した人と「不規則」と回答した人の2つのグループに分け、各グループにおける全死亡、病死、自殺、事故死について、追跡開始から19年時点までの累積的なリスクを比較しました。また、5年、10年、15年、19年の追跡期間におけるリスク差*およびリスク比**を算出しました。解析では、年齢、性別、肥満、喫煙、飲酒、運動習慣、同居状況、就労状況、睡眠時間、ストレス、身体疾患、居住地域などの影響を統計学的に調整しました。
*リスク差は、生活リズムが不規則なグループと規則正しいグループの間で、一定期間内に死亡する推定リスクが何ポイント異なるかを示します。
**リスク比は、生活リズムが不規則な人の死亡リスクが、規則正しい人の何倍であったかを示します。
生活が不規則な人では死亡リスクが上昇
98,349人を最長19年間追跡した結果、生活リズムが「不規則」と回答した人では、「規則正しい」と回答した人と比べて、全死亡、病死、事故死のリスク差およびリスク比が統計学的有意に高く、この関連は5年、10年、15年、19年の各時点でみられました。19年時点において、生活リズムが不規則な人の全死亡のリスク差は規則正しい人に比べて2.12%高く、リスク比は1.11でした。病死では、リスク差が1.85%高く、リスク比は1.11であり、事故死においてもリスク差は0.25%高く、リスク比は1.29でした。
自殺による死亡については、追跡開始から5年時点で、生活リズムが不規則な人のリスク差は0.06%高く、リスク比は1.50でした。一方、10年、15年、19年時点では、統計学的に明確な関連はみられませんでした。ただし、自殺による死亡者数は全死亡や病死と比べて少なかったため、この結果の解釈には注意が必要です。
本研究の解析で推定した累積死亡発生率のグラフからも、生活リズムが不規則な人では、規則正しい人より全死亡、病死、事故死のリスクが高い傾向が追跡期間を通じてみられました(図)。
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図.生活リズムと死亡の累積発生率(全死亡、病死、自殺、事故死)
この研究結果について
今回の結果は、生活リズムの不規則さや交代勤務と死亡リスクとの関連を報告したこれまでの研究と、おおむね一致するものでした。そのメカニズムは明らかではありませんが、生活リズムの不規則さに伴う睡眠・覚醒リズムや体内時計のずれなどが、心身の健康に影響している可能性があります。
本研究では、生活リズムの規則性を調査開始時の一つの質問で評価しており、その後の変化や、具体的にどのような活動が不規則であったかは分かりません。また、調査していない健康状態などの影響が残っている可能性があります。特に自殺については、死亡者数が少なく、感度分析では明確な関連がみられなかったため、慎重に解釈する必要があります。
まとめ
今回の研究から、生活リズムが不規則な人では、規則正しい人と比べて、全死亡、病死、事故死のリスクが高いことが示されました。また、自殺による死亡については、追跡開始から5年時点でのみリスクの上昇がみられました。今後は、睡眠や食事、活動の時刻をより詳しく繰り返し評価し、生活リズムの規則性と死亡との関連をさらに検討する必要があります。

