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多目的コホート研究(JPHC Study)

アレルギー・喘息とがん罹患リスクとの関連について

―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告―

 私たちは、いろいろな生活習慣や既往歴と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防と健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。平成2年(1990年)と平成5年(1993年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古の9保健所管内(呼称は2019年現在)にお住まいだった方々のうち、調査開始時のアンケートに回答した40~69歳の約10万人の男女の調査結果に基づいて、アレルギーや喘息の既往と、その後のがん罹患リスクとの関連を調べた結果を専門誌で発表しましたので紹介します(Cancer Med.2026年7月Web先行公開)。

 

 アレルギーや喘息は、免疫反応や慢性的な炎症が伴う疾患です。アレルギーや喘息に伴う免疫反応が、体内で生じた異常な細胞を排除する働きを高め、がんの発生を抑える可能性が報告されている一方、慢性的な炎症が酸化ストレスやDNA損傷などを通じ、がんの発生に関与する可能性も指摘されてきました。しかし、これまでの疫学研究では、アレルギーや喘息とがんリスクとの関連については結果が一致していません。また、これまでの研究の多くは欧米人を対象としたものであり、日本人を含む東アジア集団における知見は限られていました。
 そこで本研究では、日本人の大規模前向きコホート研究であるJPHC研究のデータを用いて、アレルギーおよび喘息の既往と、全がんおよび部位別がんの罹患リスクとの関連を検討しました。


 今回の研究では、調査開始時のアンケートに回答した方のうち、がんの既往がある方などを除外した103,718人(男性49,466人、女性54,252人)を解析対象としました。調査開始時のアンケートでは、喫煙、飲酒、身体活動、身長・体重、糖尿病などの既往歴に加え、医師からアレルギーまたは喘息と診断されたことがあるかどうかを尋ねました。本研究では、アレルギー、喘息、またはその両方の既往を「アレルギーおよび喘息」と定義し、がん罹患リスクとの関連を検討しました。また、喫煙は多くのがんのリスク因子であり、炎症や免疫反応にも影響を与えることが知られています。そこで、喫煙歴によって、アレルギーおよび喘息の既往とがん罹患リスクとの関連が異なるかについても検討しました。

 

アレルギーおよび喘息の既往は、全がん罹患リスクと関連がみられなかった

 対象者を2013年まで追跡したところ、平均17.9年の追跡期間中に17,679人が新たにがんと診断されました。解析の結果、アレルギーおよび喘息の既往は、全がん罹患リスクと明らかな関連を示しませんでした(図1)。また、部位別がんについても全体として明らかな関連は認められませんでした。

 

 図1.アレルギーおよび喘息と全がん・部位別がん罹患リスク

(クリックして拡大)

 

喫煙歴を考慮すると、一部のがんで関連がみられた

 喫煙歴のある人では、アレルギーおよび喘息の既往がある場合に、大腸がん、特に直腸がんの罹患リスクが高い傾向がみられました(図2)。特に男性では、喫煙歴があり、アレルギーおよび喘息の既往がある人は、喫煙歴はあるもののこれらの既往がない人と比較して、大腸がん罹患リスクが高く、ハザード比は1.30でした(図なし)。また、非喫煙女性では、アレルギーおよび喘息の既往がある人は、ない人と比較して、子宮頸がん罹患リスクが高く、ハザード比は1.98でした(図なし)。

 

 

図2.アレルギーおよび喘息と全がんおよび部位別がん罹患リスク(喫煙歴あり)
※喫煙歴がある人の中でアレルギーおよび喘息の既往がないグループを基準としたときのハザード比を示す

(クリックして拡大)

 

まとめ

 本研究では、日本人一般住民を対象とした大規模前向き研究において、アレルギーや喘息の既往は、全がんおよび部位別がん罹患リスクとは明らかな関連を示しませんでした。さらに、喫煙歴を考慮した解析では、喫煙経験のある男性における大腸がん、非喫煙女性における子宮頸がんで、リスク上昇の傾向がみられました。これらの結果は、アレルギーおよび喘息とがんとの関連が、がんの部位、性別、喫煙状況によって異なる可能性を示しています。アレルギーや喘息では、慢性的な炎症や免疫応答の変化がみられることから、これらが一部のがんの発生に関与している可能性があります。また、喫煙による炎症や酸化ストレスが、アレルギー・喘息に関連する免疫反応と組み合わさることで、がん罹患のリスクに影響する可能性も考えられます。しかし、本研究は観察研究であるため、アレルギーや喘息が直接がんの発生を引き起こす、あるいは抑制すると結論づけることはできません。

 本研究の限界として、アレルギーや喘息の既往が調査開始時の自己申告に基づいていること、アレルギーの種類、症状の重症度、発症年齢、治療薬の使用状況などの詳細な情報は得られていないことが挙げられます。また、一部の部位別がんでは症例数が少なく、リスクを十分に評価できなかった可能性があります。今回みられたリスク上昇についても、多くの部位を同時に検討したことによる偶然の影響や症例数の限界を考慮する必要があります。

 今後は、アレルギーや喘息の種類、重症度、治療内容などを考慮したより詳細な研究が必要です。また、喫煙や炎症、免疫応答などが、アレルギー・喘息とがんとの関連にどのように関わるのかについて、さらに検討していく必要があります。

 

国立がん研究センターがん対策研究所では、私たちの研究成果を含む、これまでの多くの研究結果から、日本人のためのがん予防法や健康寿命延伸のための提言をまとめています。
下記もご覧ください。

日本人のためのがん予防法
https://epi.ncc.go.jp/can_prev/index.html
https://epi.ncc.go.jp/files/02_can_prev/cancer_prevention_brochure.pdf

健康寿命延伸のための提言
https://www.ncc.go.jp/jp/icc/cohort/040/010/index.html

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