多目的コホート研究(JPHC Study)
魚介類摂取と死亡リスクとの関連について
―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告―
私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防と健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。平成7年(1995年)と平成10年(1998年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、東京都葛飾区、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の11保健所(呼称は2019年現在)管内にお住まいだった45~74歳の方々のうち、食事調査票に回答し、がん、心血管疾患、脳血管疾患の既往のない90,944人(男性42,150人、女性48,794人)を最長で令和3年(2021年)まで追跡した調査結果に基づいて、魚介類の摂取量とその後の死亡との関連を調べた結果を専門誌で論文発表しましたので紹介します(J Nutr. 2026年8月Web先行公開)。
魚介類の摂取量と死亡リスクとの関連について、欧米やアジアなど、世界中で調査されていますが、その結果は一貫していません。こうした結果の違いには、人種や国による、魚の摂取量、調理・加工方法、摂取する魚の種類の違いが反映されている可能性があります。そこで本研究では、日本人における魚介類摂取量、干物や塩タラコなどの塩蔵食品を除いた魚介類摂取量、サンマやアジ、イワシなどのn-3系多価不飽和脂肪酸を多く含む魚の摂取量と死亡リスクとの関連について調べました。
食物摂取頻度調査票の回答結果を基に、1日当たりの魚介類、塩蔵食品を除いた魚介類摂取量、n-3系多価不飽和脂肪酸を多く含む魚の摂取量を算出し、摂取量が少ない順に人数が均等になるよう5つのグループに分けました。摂取量が最も少ないグループを基準として、その他のグループの死亡リスクを調べました。解析では、年齢、居住地域、体格(BMI)、余暇の身体活動量、飲酒量、喫煙状況、コーヒー摂取頻度、緑茶摂取頻度、糖尿病既往の有無、高血圧既往の有無、総エネルギー摂取量、食事摂取量(ナトリウム、野菜、果物、乳製品)を統計学的に調整し、これらの影響をできるだけ取り除きました。
女性では、n-3系多価不飽和脂肪酸を多く含む魚の摂取が多いほど、全死亡・脳血管疾患死亡リスクが低い
約21年の追跡調査中に、26,976人が死亡しました。そのうち、全がん死亡は9,297人、脳血管疾患死亡は2,569人でした。女性は、n-3系多価不飽和脂肪酸を多く含む魚の摂取量が多いほど全死亡が低く、なかでも脳血管疾患の死亡リスクが低いという結果でした。一方で、男性では、n-3系多価不飽和脂肪酸を多く含む魚の摂取量が多いほど、全死亡のリスクが高くなりました(図1)。
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図1. 魚介類摂取と死亡リスクとの関連(上図:男性、下図:女性)
この研究から見えてきたこと
今回の研究では、女性では、n-3系多価不飽和脂肪酸を多く含む魚の摂取量が多いほど、全死亡と脳血管疾患の死亡リスクが低いことが明らかになりました。先行研究では、魚由来のn-3系多価不飽和脂肪酸の摂取量が多いほど死亡リスクが低いことが報告されており、本研究も同様の結果でした。n-3系多価不飽和脂肪酸には、抗炎症作用、抗血栓作用、血圧低下作用、脂質改善作用などがあることが報告されており、女性においてみられた全死亡と脳血管疾患死亡リスクの低下には、これらの作用が関係している可能性が考えられます。
また、女性では、塩蔵食品を除いた魚介類の摂取量が多いほど、脳血管疾患死亡のリスクが低い傾向がありました。男性では、量が増えるほどリスクが低くなるという傾向はみられませんでしたが、同様の結果がみられました。反対に、先行研究では、塩に含まれるナトリウムの摂取量が増加するごとに、脳血管疾患死亡のリスクが高くなることが報告されています。このことは、塩蔵食品に含まれるナトリウム摂取量が魚のリスク低下の関連を弱めている可能性も考えられます。一方で、男性では、n-3系多価不飽和脂肪酸を多く含む魚の摂取量が多いほど、全死亡のリスクが高くなりました。男性について、喫煙や飲酒習慣別に状況を確認しましたが、理由を説明できる結果は得られませんでした。
今回の研究から、摂取する魚の種類によって、死亡のリスクとの関連が異なる可能性が考えられました。しかしながら、本研究では、追跡期間中の魚介類の摂取量の変化を考慮できておらず、また、幅広い生活習慣や食事の影響をできるだけ取り除くようにしましたが、それらの影響を完全に排除することはできていなかった可能性があります。そのため、今回の結果を確認するには今後さらなる研究が必要です。

