多目的コホート研究(JPHC Study)
2015/05/07 緑茶と死亡・死因別死亡、コーヒーと死亡・死因別死亡について
JPHC研究からの論文発表のお知らせ
多目的コホート(JPHC)研究から、緑茶摂取と全死亡リスクおよびがん、心疾患、
脳血管疾患、呼吸器疾患及び外因死を含む5大死因死亡リスクとの関連を検討した
研究の結果が発表されました。この研究により、緑茶を習慣的に摂取する群において、
男女の全死亡リスク及び心疾患、男性の脳血管疾患及び呼吸器疾患による死亡リスク
の減少が示されました。
この論文の状況は以下のとおりです。
Annals of Epidemiology 2015年 WEB先行公開中
緑茶を習慣的に摂取する群において、男女の全死亡リスクが低い
緑茶は、日本で広く飲まれています。これまでに循環器疾患やがんとの関連について
研究が行われてきましたが、健康の指標となる全死亡や主要な死因との関連については
あまりよく分かっていません。
そこで、多目的コホートの40~69歳の男女約9万人を研究開始(1990年または1993年)
から2011年まで追跡した調査結果をもとに、緑茶の習慣的摂取と全死亡・主要死因死亡
リスクとの関連を検討しました。
平均で約19年の追跡期間中に1万2,874人が亡くなりました。そのうち、5,327人ががん、
1,577人が心疾患、1,264人が脳血管疾患、783人が呼吸器疾患、992人が外因による死亡
でした。
解析の結果、緑茶を1日1杯未満飲む群を基準として比較した場合、1日5杯以上の群の
全死亡リスクは、男性の全死亡0.87、女性の全死亡で0.83と低く、摂取量が増すにつれて
リスクが下がる負の相関がみられました。
死因別には、がん死亡との関連は男女ともみられませんでしたが、心疾患による死亡は
男女とも低く、脳血管疾患と呼吸器疾患については男性でのみ低いという結果でした。
外因による死亡との関連については、5年以内の死亡例を除いた解析でのみ、女性で
リスクの減少が確認されました。
緑茶摂取で心疾患などによる死亡リスクの低下がみられた理由については、緑茶に含まれる
カテキン(血圧や体脂肪、脂質の調整)やカフェイン(血管保護、呼吸機能改善)などの
効果が推定されます。また、限定的にではありますが女性で外因による死亡リスクの低下
がみられたのはテアニンやカフェイン(認知能力や注意力の改善)の効果かもしれません。
一方、がん死亡については、以前に部位別の分析で女性の下部胃がんのリスク低下を報告
していますが、全体については有意な関連が見られませんでした。詳しくは、ホームページ
に掲載された概要版をご覧ください。
コーヒーと死亡・死因別死亡の関連も報告しました
また、多目的コホート研究から、コーヒーと死亡・死因別死亡の関連を分析した結果を
最近報告しています(American Journal of Clinical Nutrition WEB先行公開中)。
コーヒー摂取により、全死亡および心疾患、脳血管疾患、呼吸器疾患による死亡リスクの低下
が確認されましたが、がん死亡リスクとは関連がみられませんでした。5杯以上の群では
統計学的有意なリスク減少がみられませんでした。詳細については、HPの概要版をご覧ください。