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現在までの成果

血中ビタミンD濃度と前立腺がん罹患との関連について

―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告―

 

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防と健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。平成2年(1990年)と平成5年(1993年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の10保健所(呼称は2016年現在)管内にお住まいだった、40~69歳の男性約4万3千人の方々を平成17年(2005年)まで追跡した調査結果にもとづいて、血漿中の25-水酸化ビタミンD濃度(注1)と前立腺がん罹患率との関連を調べた結果を専門誌で論文発表しましたので紹介します(European Journal of Clinical Nutrition 2016年10月WEB先行公開)

(注1 25-水酸化ビタミンD: 体内に貯蔵されたビタミンDの状態をよく反映することが知られるため、一回の測定で把握するのに適している指標。

ビタミンDは細胞の増殖をおさえたりすることで、がんを予防する因子の一つとして考えられており、今まで、私たちの研究グループからも、直腸がんに予防的に作用する可能性を報告しています。ところが、これまで行われてきた血中ビタミンD濃度と前立腺がんとの関連を調べた21の研究をまとめた報告によると、血中25-水酸化ビタミンDの高いグループは、低いグループと比べて、前立腺がんのリスクが17%上昇する、と報告されています。しかし、これらの研究は主に欧米からの報告であり、皮膚のメラニン量が少ない欧米人は、日本人と比較して血中ビタミンD産生能が高く、また、欧米人のビタミンDの主な摂取源はビタミンD強化牛乳であるのに対し、日本人では魚である、と報告されていることから、日本人におけるビタミンDと前立腺がんとの関連は異なる可能性があります。しかし、日本人をはじめとしたアジア人での研究はほとんど行われていません。そこで、私たちは、日本人における、血中25-水酸化ビタミンD濃度と前立腺がんとの関連を調べました。

 

保存血液を用いた、コホート内症例対照研究

多目的コホート研究を開始した時期(1990年から1995年まで)に、一部の方から、健康診査等の機会を利用して研究目的で血液を提供していただきました。今回の研究対象に該当し保存血液のある男性約1万4000人のうち、約13年の追跡期間中、201人が前立腺がんに罹患しました。前立腺がんになった方1人に対し、前立腺がんにならなかった方から年齢・居住地域・採血日・採血時間・空腹時間の条件をマッチさせた2人を無作為に選んで対照グループに設定し、合計603人を今回の研究の分析対象としました。
今回の研究では、保存血液を用いて、25-水酸化ビタミンD濃度を測定しました。

 

血中25-水酸化ビタミンD濃度と前立腺がんリスクの間には関連を認めない

25-水酸化ビタミンD濃度の値によって低い、中間、高い、の3つのグループに分け、前立腺がんのリスクを比較しました。その結果、25-水酸化ビタミンDと前立腺がんリスクとの間に予防的な関連は見られず、進行前立腺がんでは統計学的有意ではありませんが、高濃度でリスク上昇の傾向が見られました(図)。さらに、日本人のビタミンDの主要な摂取源である魚摂取量でわけて解析しましたが、関連はみられませんでした。

図 血中25-水酸化ビタミンD濃度と前立腺がんリスク

 

さらなる研究結果の蓄積が必要

これまでに主に欧米で行われた21の研究を統合解析した結果でも、予防的な関連を観察しておらず、今回の結果は、それらの知見にも一致するものでした。人種やビタミンD摂取源の異なる日本人でも、25-水酸化ビタミンDは前立腺がんに予防的に作用せず、むしろ、統計学的に有意ではありませんでしたが、進行前立腺がんのリスクの上昇と関連がありました。前立腺がん細胞内では、25-水酸化ビタミンDを代謝する酵素が欠損する、という報告があり、25-水酸化ビタミンDは前立腺がんの予測マーカーである可能性があります。 今後もアジアからのさらなる研究結果の蓄積が必要です。

研究用にご提供いただいた血液を用いた研究の実施にあたっては、具体的な研究計画を国立がん研究センターの倫理審査委員会に提出し、人を対象とした医学研究における倫理的側面等について審査を受けてから開始します。今回の研究もこの手順を踏んだ後に実施いたしました。国立がん研究センターにおける研究倫理審査については、公式ホームページをご参照ください。

多目的コホート研究では、ホームページに保存血液を用いた研究計画のご案内を掲載しています。

 

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