トップ >多目的コホート研究 >現在までの成果 >血清総コレステロールと自殺との関連について

現在までの成果

血清総コレステロールと自殺との関連について

―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告―

 

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防と健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。平成2年(1990年)と平成5年(1993年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、東京都葛飾区、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の11保健所(呼称は2017年現在)管内にお住まいだった、40~69歳の男女約4万5千人の方々を平成24年(2012年)まで追跡した調査結果にもとづいて、血清総コレステロールと自殺との関連を調べた結果を専門誌で論文発表しましたので紹介します(Acta Psychiatr Scand)。

 

ベースライン調査時の血清総コレステロール値を用いたコホート研究

多目的コホート研究を開始した時期(1990年から1995年まで)に、一部の方から、健康診査等の機会に測定した血清コレステロール値などのデータを研究目的で提供していただきました。今回の研究対象の男女約4万5千人のうち、平均19.6年の追跡期間中に185人(男性107人、女性78人)が自殺によって亡くなりました。

 

血清総コレステロールの高値は女性の自殺リスクと関連する

日本動脈硬化性疾患予防ガイドラインの基準では、220mg/dl以上が高コレステロール血症と定義されています。そのため、測定した血清総コレステロール値によって低い(180mg/dl未満)、中間(180-220mg/dl)、高い(220mg/dl以上)、の3つのグループに分類し、中間のグループを基準としたときの自殺のリスクを比較しました。
その結果、女性では、血清総コレステロールが中間のグループ(180-220mg/dl)と比較して、高いグループ(220mg/dl以上)で、自殺のリスクが1.9倍高いことが統計学的に明らかになりました。また、LDLやHDLコレステロールの高値も自殺リスク上昇と関連があることが明らかになりました。一方、男性では、血清総コレステロールと自殺との間に統計学的有意な関連性は認められませんでした(図)。

271_1

 

なぜ血清総コレステロールが高いと女性の自殺リスクが高まるのか?

今回の結果(高コレステロールの女性で自殺リスクが高い)の理由の一つとしては、高コレステロールが脳血管性うつ症状を誘発することが報告されており、そのことが自殺リスクの上昇に影響を及ぼした可能性が考えられます。また、私たちの研究では、すでに、日本人における健康的な食事パターンが欧米型の食事パターンと比較して自殺のリスクを下げることを報告していますが(食事パターンと自殺との関連について)、高コレステロールに作用する欧米型の食事パターンが自殺リスクの上昇と関連している可能性もあります。

 

さらなる研究結果の蓄積が必要

本研究では、血清コレステロールをベースライン調査時のみでしか測定していないため、追跡中に値がかわっている可能性は考慮できていません。また、抗コレステロール薬であるスタチンがうつ症状と関連があるとの報告もありますが、服薬については考慮しきれていません。今後は、それらを考慮した、さらなる研究結果の蓄積が必要です。

 

上に戻る