トップ >多目的コホート研究 >現在までの成果 >飲酒および飲酒パターンと全死亡・主要死因死亡との関連について
リサーチニュース

JPHCに関するお問い合わせはこちら
 


 

多目的コホート研究のメールマガジン購読申込みはこちら

多目的コホート研究(JPHC Study)

飲酒および飲酒パターンと全死亡・主要死因死亡との関連について

―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告―

 

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防と健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。平成2年(1990年)と平成5年(1993年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、東京都葛飾区、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の11保健所管内にお住まいだった方々のうち、がんや循環器疾患になっていなかった40~69歳の男女約10万人を、平成23年(2011年)まで追跡した調査結果にもとづいて、飲酒及び飲酒パターンと全死亡・主要死因死亡との関連を調べました。その研究結果を論文発表しましたので紹介します(J Epidemiol.2018 Mar 5;28(3):140-148)。

飲酒は循環器疾患やがんなどのリスク要因であることは数多くの研究で報告されています。一方、適量の飲酒は死亡リスク低下と関連していることも先行研究から示唆されています。これまでに飲酒と循環器疾患やがんによる死亡との関連についての研究は行われてきましたが、日本人の5大主要死因との関連について包括的に取り扱った研究はまだありません。また、週当たりの飲酒量が同じでも、お酒を飲むパターン、すなわち休肝日があるかないかで死亡リスクは異なることも報告されています。そこで、飲酒および飲酒パターンと全死亡リスクおよびがん、心疾患、脳血管疾患、呼吸器疾患及び外因死を含む主要死因死亡リスクとの関連を検討することを今回の研究の目的としました。

 

少~中量のお酒を飲むグループでは、男女の全死亡リスク及びがん、心疾患、脳血管疾患による死亡リスクが減少する一方、多量飲酒グループでは死亡リスクが統計学的有意に上昇

研究開始時、5年後調査時及び10年後調査時にお酒を飲む頻度と一日当たり飲む量に関する質問への回答から、研究開始から10年以内は研究開始時と5年後調査の飲酒量の累積平均飲酒量、研究開始10年目以降は研究開始時から5年後調査及び10年後調査時の累積平均飲酒量を計算して、週当たりエタノール換算飲酒量を算出しました。男性は、お酒を飲まない、時々飲む(月1~3日)、週1~149g、週150~299g、週300~449g、週450~599g、週600g以上という7つのグループに分類しました。女性は、お酒を飲まない、時々飲む(月1~3日)、週1~149g、週150~299g、週300~449g、週450g以上という6つのグループに分類しました。それらのグループを用いて、その後の全死亡及びがん、心疾患、脳血管疾患、呼吸器疾患、外因による死亡との関連を分析しました。エタノール換算飲酒量の目安は、週150gの場合、ビール大瓶で約7本、あるいは日本酒で約7合になります。

休肝日については、週1日以上お酒を飲むと回答した人のうち、お酒を飲む日数に関する質問への回答から、休肝日なし、週1~2日あり、週3~4日あり、週5~6日あり、という4つのグループに分けて、その後の全死亡及びがん、心疾患、脳血管疾患、呼吸器疾患、外因による死亡との関連を分析しました。本研究の追跡調査中には、15,203人の死亡が確認されました。

男性では、お酒を全く飲まないグループに比べ、月1日~週449g飲むグループで全死亡リスク低下が見られた一方、週600g以上飲むグループでは有意なリスク上昇が見られました。女性では、全く飲まないグループに比べ、月1日~週149g飲むグループで全死亡リスク低下が見られた一方、週450g以上飲むグループで有意なリスク上昇が見られました。(図1)

281_1

*年齢、保健所地域、喫煙習慣、BMI、高血圧・糖尿病既往、お酒を飲んで顔が赤くなるか、運動習慣、コーヒー・緑茶摂取、総エネルギー摂取量、果物・野菜・魚・肉・乳製品摂取及びベースライン調査時の職業の有無で調整。 

 

飲酒は主要死因別死亡とも関連

死因別に調べたところ、男女ともにがん死亡、脳血管死亡及び心疾患死亡については、少~中程度量飲むグループで死亡リスクの低下がみられました。さらに男性の呼吸器疾患死亡でも同様のリスク低下が見られました。(図2-1、図2-2)

281_2

281_3

*図2-1、図2-2とも、年齢、保健所地域、喫煙習慣、BMI、高血圧・糖尿病既往、お酒を飲んで顔が赤くなるか、運動習慣、コーヒー・緑茶摂取、総エネルギー摂取量、果物・野菜・魚・肉・乳製品摂取及びベースライン調査時の職業の有無で調整。呼吸器疾患については、週300g以上飲む女性での死亡はなし。

一方、お酒を飲まない人を除外し、現在お酒を飲むグループのみを対象として解析したところ、男女ともにお酒を飲めば飲むほど全死亡リスクやがん及び脳血管疾患による死亡リスクが上昇することが分かりました。

 

休肝日と死亡リスク低下は有意に関連

普段、週に1日以上お酒を飲むグループのみを対象とし、男性は週当たりの飲酒量別に3つのグループ(週150g未満、週150~299g、週300g以上)に分けて、毎日飲むグループ(休肝日のないグループ)に比べ、休肝日のあるグループの死亡リスクを解析しました。その結果、休肝日のないグループに比べ、男性で週1~2日休肝日を取り、かつ飲酒量が週150g未満のグループでは、全死亡リスクが低下していました。また、男性で週1~2日休肝日を取るグループでは、飲酒量に関わらずがんや脳血管疾患死亡リスクが低下していました。

 

飲酒と死亡リスクはどう関係しているのか

なぜ少量から中量の飲酒で死亡リスクの低下が見られるのでしょうか。まず、低用量の飲酒によるHDLの増加や血漿フィブリノーゲン値の低下を介した血液凝固性の低下などがあげられます。また、少量から中量の飲酒は抗炎症作用があるといわれており、これらが循環器疾患死亡リスク低下に作用しているのかもしれません。さらに、少量から中量の飲酒では免疫機能やインスリン抵抗性の改善につながるという報告があり、この点でがん死亡リスクとの関連があるかもしれません。一方、多量飲酒は様々な疾患のリスク要因であることが多くの先行研究で報告されています。本研究でも、現在お酒を飲む人に限った解析では、多く飲むほど死亡リスクが上昇することが分かり、適量飲酒の重要性が再確認されました。

 

飲酒量の目安

何らかのがんになりにくくするには、日本酒換算で一日平均2合以上の多量飲酒は慎んだ方がいいといえます。しかし、同じ多目的コホート研究からの結果では、最近増加している糖尿病(飲酒と2型糖尿病の発症について)や大腸がん(お酒・たばこと大腸がんの関連について)なら、一日平均1合を超えると危険性が高くなるという結果となっています。いろいろな生活習慣病をまとめて予防しようと考えると、お酒は日本酒換算で一日1合(ビールなら大びん1本、ワインならグラス2杯)程度までに控えておいた方がよいといえるでしょう。

 

休肝日と死亡リスク

なぜ休肝日を取るグループでは、全く休肝日のないグループに比べ全死亡、がん死亡及び脳血管死亡のリスクが低下するのでしょうか。第一に、毎日飲む人は常に発がん物質であるアセトアルデヒドに曝露されていますが、休肝日をもうけることで、曝露量が少なくなる可能性があります。第二に、社会的な支えが考えられます。先行研究では、休肝日を取る男性は社会的交流の場(飲み会など)で飲む傾向が強いことが報告されており、私たちのこれまでの研究でも、社会的な支えが多い人は、適量の飲酒量であれば循環器疾患になりにくいことが報告されています(飲酒と循環器疾患発症との関連への社会的な支えの影響)。このことから、休肝日を取る男性は、社会的な支えが多いことによる健康に良い影響を受けることで、結果的に死亡リスクの低下につながるのかもしれません。

本研究はベースライン開始時での飲酒習慣及び5年後調査、10年後調査での飲酒習慣に基づき解析を行っています。飲酒開始年齢からベースライン時までの飲酒量情報はないため、生涯飲酒量に基づく研究ではないことをご了承ください。

上に戻る