多目的コホート研究(JPHC Study)
2008/7/29 カルシウムと循環器系疾患
JPHC研究からの論文発表のお知らせ
多目的コホート(JPHC)研究から、カルシウムと循環器系疾患リスクとの関連を調べた結果が発表されました。 論文の状況は以下の通りです。 Stroke2008年7月WEB先行公開
乳製品からのカルシウム摂取が脳卒中発症のリスクを低減
欧米の先行研究では、カルシウムや乳製品の摂取と脳卒中・虚血性心疾患リスクの関係の結果は一致していません。 日本人は欧米人に比べカルシウムや乳製品の摂取量が少ないことが知られています。2006年に、別のコホート(JACC) 研究から、40〜79歳の日本人男女約11万人で循環器系疾患による死亡との関連を検討し、カルシウムや乳製品の摂取の多いグループで脳卒中による死亡リスクが低いことが示されました。しかしながら、発症リスクについての結果は得られていませんでした。 今回、多目的コホート研究で、カルシウム・乳製品と循環器系疾患との発症リスクを検討しました。40〜59歳の男女約4万人を対象に、食事摂取頻度を尋ねるアンケートを行い、総カルシウムおよび乳製品からのカルシウム摂取量を算出しました。それぞれによって5つのグループに分け、グループ間で脳卒中および虚血性心疾患発症のリスクを比較しました。 平均で約13年の追跡期間中、脳卒中1,321人、虚血性心疾患322人の発症が確認されました。 分析の結果、総カルシウム摂取量の最も多いグループでは最も少ないグループに比べて脳卒中の発症リスクが0.70倍と低いことがわかりました。また、乳製品からのカルシウム摂取量で見ると0.69倍で、脳梗塞、脳出血のいずれの病型でも低いことがわかりました。 この研究によって、食事からのカルシウムの摂取、特に乳製品からのカルシウム摂取が脳卒中発症のリスクを低減させることが示されました。
研究結果について
この研究結果から、日本人は乳製品からのカルシウムの摂取を増やすことによって、脳卒中を予防できる可能性が示されました。ただし、カルシウムのサプリメントについては検討されていないため、脳卒中を予防するかどうかはわかりません。 詳しくは、ホームページに掲載された概要版をご覧ください。
・カルシウム摂取と循環器疾患の関連について —概要—