多目的コホート研究(JPHC Study)
2008/8/22 血中の有機塩素系化合物と乳がん罹患
JPHC研究からの論文発表のお知らせ
多目的コホート(JPHC)研究から、血漿中の有機塩素系化合物の値と乳がん発生率の関連を調べた結果が発表されました。 論文の状況は以下の通りです。 Science of the Total Environment 2008年402巻171-175頁
血中有機塩素系化合物濃度と乳がんリスク
アジアで初めての大規模な前向き研究
欧米では、農薬や殺虫剤として使われていた有機塩素系化合物の血中濃度と乳がんの関連を調べる疫学研究は数多く行われていますが、アジアでは少なく、しかも大規模な前向き研究では検討されていません。 そこで、1990年から95年の間に提供していただいたJPHC研究の保存血液を用いて、2002年末までの追跡期間中に発生した乳がん144例と乳がんにならなかった対照グループ288例で、血漿中の4種類の血漿中有機塩素系化合物濃度について比較しました。 DDTは殺虫剤として日本では1981年まで広く使用されていましたが、今回調べたp,p'-DDTはその主成分であり、p,p'-DDEはその代謝物です。HCB 、β-HCHもそれぞれ殺菌剤、殺虫剤として1970年代前半まで使用されていました。 その結果、いずれの物質についても乳がんリスクとの間に関連は見られませんでした。
日本人女性でも、日常生活で蓄積されるレベルでは関連が見られず
これらの有機塩素系化合物にはエストロゲン様あるいは抗エストロゲン様作用があると言われており、乳がんリスクの上昇と関連しているのではないか、という仮説があります。これまでに欧米を中心に盛んに研究が行われてきましたが、ほとんどの研究でリスクの上昇を観察していません。 今回の結果は欧米の知見に一致するもので、日本人においても、日常生活で蓄積されるレベルでは、有機塩素系化合物と乳がんとの関連は見られませんでした。 詳しくは、ホームページに掲載された概要版をご覧ください。
・血中有機塩素系化合物濃度と乳がん罹患との関係について —概要—