多目的コホート研究(JPHC Study)
2006/11/17 卵の摂取頻度、血清総コレステロールとその後の心筋梗塞リスク
多目的コホート(JPHC)研究から、卵の摂取頻度や血清総コレステロール値と、その後の心筋梗塞発症リスクの関係を調べた結果が発表されました。(「ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・ニュートリション」2006年11月号)。
この研究の母体となる多目的コホート研究では、全国約14万人を対象に、1990から94年に食事を含む生活習慣要因などについて調査し、その後の長期追跡期間に観察されたがんや心筋梗塞等との関連を前向きに調べています。
今回の研究では、男女約9万1千人のアンケート調査による卵の摂取頻度と、約3万3千人の健康診査データ提供者の総血清コレステロール値でそれぞれグループ分けし、その後の心筋梗塞発症リスクを比較しました。
卵とコレステロールと心筋梗塞
卵にはコレステロールが多く含まれるため、健康診査などでコレステロール値が高い人には、心筋梗塞などの予防のために卵を控えるように指導されます。病棟における臨床研究では、卵の摂取が血清コレステロール値に影響する・しないで結果が分かれています。卵の摂取と心筋梗塞リスクの関連を調べた疫学研究でも、欧米を中心に関連なしとするものがある一方で、卵が主なコレステロール源になっている日本では関連があるとされる報告が複数あります。
今回の研究の分析を担当した中村保幸・京都女子大学教授は、以前、”NIPPONDATA80”研究で、女性の卵摂取と血清総コレステロール値および14年の追跡調査で観察された心筋梗塞による死亡リスクに関連を見出し、2004年に報告しています。
卵は心筋梗塞リスクと関連なし
JPHC研究の調査では、卵をほとんど食べない方が12%、週に1—2回食べる方が23%、3—4日食べる方が34%、ほとんど毎日食べる方が31%でした。その後約10年の追跡期間に、462人が心筋梗塞を発症しました。その約8割は男性でした。
卵をほぼ毎日食べるグループに比べ、より摂取頻度の少ないその他のグループで心筋梗塞リスクが低くなることはありませんでした。
卵摂取で血清総コレステロールは高くならない
健康診査データがある方について、卵摂取によるグループ分けをして、血清総コレステロール値の平均値を見ると、ほとんど毎日食べるグループでも高くなってはいませんでした。むしろ卵をほとんど食べていないグループでやや高めでした。
中村教授は、この結果について、卵をほとんど食べていないグループではコレステロールを制限していると答えた人が多い点や、今回の研究の調査時期が、コレステロールが体に悪いという考え方が日本中に普及した時期とちょうど重なる点などを指摘し、もともとコレステロール値が高く、心筋梗塞などを予防するために卵を控えたという人が多いのではないかと話しています。
ただし、今回の研究結果では、卵をほとんど毎日食べるグループでも高くなっていませんので、やはり、現在の日本の一般的な食習慣の範囲では、多くの場合、卵摂取による血清総コレステロール値の変動はそれほど大きいものではないと考えられます。
血清総コレステロールが高いと心筋梗塞リスクが2倍
健康診査データがある人について、血清総コレステロール値で5つにグループ分けをして、心筋梗塞の発症リスクを比べました。その結果、血清総コレステロール値が最も低い(180mg/dlよりも低い)グループに比べ、最も高い(240 mg/dl以上)グループでは2倍高くなりました。
研究結果について
血清総コレステロール値が高いほど、心筋梗塞の発症リスクが高くなることをあらためて確認する結果でした。しかし、予想に反して、卵の摂取量が少ないグループでも、心筋梗塞の発症リスクが低くなるわけではありませんでした。
血清総コレステロール値は、卵だけで決まるものではありません。動物性脂肪の摂取量や食事以外の遺伝的な体質によっても影響を受けることがわかっています。また、卵はコレステロール以外に様々な成分を含む食品です。
コレステロール値は、まず、血清総コレステロール値だけでなく、最近精度が高い直接測定が可能になった、悪玉と呼ばれるLDLコレステロール値などについての検査結果も合わせて参考にし、適切な指導や治療を受けることが大切です。
詳しくは、概要版をご覧ください。