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多目的コホート研究(JPHC Study)

2006/10/10 肺がん家族歴と肺がんリスク

多目的コホート(JPHC)研究から、両親、あるいは兄弟・姉妹に肺がんにかかった人がいるかどうかという家族歴と、その後の肺がんリスクの関係を調べた結果が発表されました。(「チェスト」2006年10月10日発行)。

この研究の母体となる多目的コホート研究では、全国約14万人を対象に、1990から94年にがんなどの家族歴や喫煙を含む生活習慣要因などについて調査し、その後の長期追跡期間に観察されたがんなどの生活習慣病との関連を前向きに調べています。今回の研究では、男女約10万人のアンケート調査による肺がんの家族歴あり・なしでグループ分けし、その後約11年間の肺がん発生リスクを比較しました。

肺がんの家族歴

日本で増加している肺がんの最大の原因は喫煙習慣です。しかし、それだけですべての肺がんが説明できるわけではなく、別の要因についても探索が続けられています。たばこの煙などの環境要因と相互作用して肺がんリスクを高めるのではないかと考えられる遺伝子タイプも報告されています。

家族歴がある人では、ない人に比べ、肺がんリスクが高くなるのではないかという報告がありますが、日本人ではどの程度の影響なのか、よくわかっていません。

家族歴があると、肺がんリスクが2倍高くなる

男性約4万9000人、女性約5万3000人の対象者のうち、肺がん家族歴ありの方は、男女とも全体の2%でした。その後約11年の追跡期間に、791人で肺がんの発生を確認しました。そのうち584人が男性、207人が女性でした。

肺がん家族歴があるグループの肺がんリスクは、家族歴がないグループの2倍高くなりました。この傾向は、男性よりも女性でやや高く、肺がんの組織型では扁平上皮がんで高くなり、また、喫煙状態別では、現在喫煙者よりも喫煙したことがない人でよりはっきりと現れました。

家族歴と肺がん

家族歴があると、肺がんリスクが高くなるということは、遺伝的な要因だけを示すものではありません。家族は、生活環境の多くを、長年にわたって共有します。したがって、今回の結果は、家族が共有する複数の要因の組合せによるものと考えられます。

今後、肺がんに関連する喫煙以外の生活習慣要因を探るほか、体質に関連する遺伝子タイプや、遺伝子タイプと喫煙習慣などの環境要因との相互作用の研究を進めることで、肺がん発生のメカニズムが解明されることが期待されます。

研究結果について

今回の結果は、肺がんのメカニズムを考える手がかりとして重要です。しかし、家族歴で肺がんを過度に心配する必要はありません。現時点で、肺がんの予防に最も有効な方法は「禁煙」であることは言う間でもありません。


詳しくは、概要版をご覧ください。

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