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多目的コホート研究(JPHC Study)

2006/9/26 糖尿病とその後のがんリスク

多目的コホート(JPHC)研究から、糖尿病と診断されたことがあるかどうかと、その後のがんリスクの関係を調べた結果が発表されました。(「アーカイブズ・オブ・インターナル・メディシン」2006年9月25日発行)。

この研究の母体となる多目的コホート研究では、最初に生活習慣などのリスク要因を調査し、その後の長期追跡期間のがん等の発生との関連を前向きに調べています。今回の研究では、アンケート調査で「これまでにお医者さんから糖尿病と云われたことがある」または「お医者さんから糖尿病の薬を処方されて定期的に飲んでいる」と答えた方を糖尿病になったことがあるものとし、そうでない方の間で、その後の何らかのがんになるリスクを比較しました。

糖尿病とがんリスクについて

糖尿病では、網膜症、腎症、神経障害など、さまざまな合併症を警戒し、発症を予防することが大切ですが、そのリストの中に、今のところ、がんは挙げられていません。

糖尿病とがんとの関連は、特に肝がんと膵がんでリスクが高くなることについては、以前から指摘されていました。また、最近は、結腸がんでリスクが高くなる、あるいは前立腺がんでリスクが低くなるという関連を報告する研究が出ています。しかし、糖尿病でどの程度がん全体のリスクが高くなるのかは、まだ明らかにされていません。

糖尿病になったことがある人のがんリスクは1.2-1.3倍

JPHC研究の調査では、男女約10万人のうち、糖尿病になったことがある方は男性の7%、女性の3%でした。その後約11年の追跡期間に、男性3,907人、女性2,555人が何らかのがんにかかりました。

糖尿病になったことがあるグループでは、そうでないグループに比べて、何らかのがんになる危険性が男性で1.3倍、女性で1.2倍高くなりました。臓器別にみると、糖尿病になったことがあるグループが特にかかりやすかったのは、男性では肝がん、腎がん、膵がん、結腸がん、胃がん、女性では胃がん、肝がん、卵巣がんでした。

糖尿病とがんの関わり

なぜ、糖尿病になったことがある人ではがんリスクが高くなるのか、はっきりとわかっているわけではありません。その理由は、がんの種類によっても様々であると考えられます。

まず、糖尿病で高インスリン血症やIGF-I(インスリン様成長因子1)の増加など体内の変化が生じ、がんが促されるという説明が可能です。また、糖尿病とがんには、運動不足や肥満、ホルモンの状態など共通のリスク要因があるためとも言えます。さらに、膵機能の衰えや肝炎ウイルスの慢性感染など、がんが生じるプロセスによって糖尿病が誘発されるという報告もあります。

研究結果について

日本では生活習慣病である2型糖尿病が増加し、その予防の重要性が高まっています。糖尿病が将来のがん発生に影響を及ぼす可能性があると同時に、糖尿病とがんの両方に共通の生活習慣によって、どちらの疾病になる危険も高まってしまいます。喫煙、肥満、運動不足など、多くの生活習慣病に共通のリスク要因を改善していくことが、生活習慣病全体の予防につながります。


詳しくは、概要版をご覧ください。

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