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多目的コホート研究(JPHC Study)

2006/7/20 食物繊維と大腸がんの関係

多目的コホート(JPHC)研究から、食物繊維の摂取量と大腸がんリスクの関係を調べた結果が発表されました。
(「インターナショナル・ジャーナル・オブ・キャンサー」2006年4月26日インターネット先行公開、9月15日号掲載)

多目的コホート研究では、男女約十万人の方に対し、研究を開始した1990年とその5年後(コホートI)、あるいは1993年とその5年後(コホート II)に、食事調査を含む生活習慣に関するアンケート調査を2回実施しました。このうち、5年後調査にはより詳しい138項目の食事調査が含まれています。食事調査から食物繊維の摂取量を算出し、その後2002年までに発生した大腸がんとの関連を検討しました。

初回調査のデータは約9万人を平均10年、5年後調査のデータは約8万人を平均6年追跡したものです。

食物繊維は大腸がんリスクと関連なし

追跡期間中、初回調査以後に907人、5年後調査以後には522人に大腸がんが発生しました。それぞれ食物繊維の摂取量によって5つのグループに分け、大腸がんのリスクを比べました。すると、初回または5年後のどちらのデータを用いた研究でも、食物繊維の摂取量は大腸がんリスクとの関連はみられませんでした。

食物繊維が大腸がんに予防的であるという長年の仮説は、最近の疫学研究の大半で否定されています。ただし、ヨーロッパ8か国52万人という幅広い対象者を集めた研究では、食物繊維をよくとる人ほど大腸がんリスクが低くなったという報告が2003年5月にありました。

一方、欧米の13のコホート研究を統合した73万人のデータを用いた研究では、食物繊維が多くてもリスクは低くならないものの、1日10g未満の最も少ない人(全体の1割)ではリスクが高くなったと報告されています。

極端に少ない人ではリスクが高くなる

今回の研究でも、より詳しい食事調査に基づく5年後のデータからは、最も摂取量が少ないグループでは他のグループに比べ大腸がんリスクが高くなっているようでした。そこで、最も摂取量の少ないグループをさらに3つに分け、7つのグループの間で大腸がんリスクを比べました。すると、女性で食物繊維摂取量が最少グループのリスクは、最多グループの2.3倍高くなりました。つまり、女性の1割に満たない、食物繊維が極端に少ない人たち(平均約6g)に限って、大腸がんリスクが高くなっていました。

研究結果について

今回の研究では、食物繊維の摂取量と大腸がんリスクの間に関連はみられませんでした。欧米の最近の疫学研究でも、食物繊維に大腸がん予防効果は認められなかったという結果が大半を占めています。日本でも、大腸がん予防のために十分な食物繊維は、ほとんどの方で普段の食事から取ることが出来ていて、それ以上取っても効果は変わらない可能性が高いと考えられます。

とはいっても、食物繊維と、心疾患や糖尿病など他の生活習慣病との関連や全般的な健康を考えると、決して少なくても良いというわけではありません。まして、この研究結果だけで、従来の食物繊維と健康に関わる基本的な考え方が覆されるわけではありません。


詳しくは、ホームページに掲載された概要版をご覧ください。

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