多目的コホート研究(JPHC Study)
2006/3/13 体型と前立腺がん発生の関係
多目的コホート(JPHC)研究から、体型と前立腺がんの関係を調べた結果が発表されました。(「ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・キャンサー」2006年3月13日号)。日本人を対象とする前向きコホート研究では、初めての報告です。
肥満指数や身長と前立腺がん
前立腺がんは、欧米で多く、日本を含むアジアでは少ないことが知られていますが、その理由はよくわかっていません。これまでの研究から、肥満男性や身長が高い男性では前立腺がんリスクが高いという結果を示す報告もありますが、関連がないという報告もあり、必ずしも一致していません。
そこで、多目的コホート研究の一環として、40‐69歳の男性約5万人を10-13年追跡したデータを用いて、肥満指数(BMI:「体重」kgを「身長」mの二乗で割り算した値)や身長とその後の前立腺がん発生との間にどのような関連があるかを調べてみました。
追跡期間中に、311人が前立腺がんの診断を受けました。まず、肥満指数で4つのグループに分けて前立腺がんリスクを比べましたが、関連はみられませんでした。次に、がんのステージがわかっているケースを、病巣が前立腺内にとどまる早期がん(179人)と、それ以降の進行がん(91人)に分けて分析しました。このうち進行がんについては、肥満指数の大きいグループでリスクが高くなるかもしれない可能性は否定できませんでした。ただし件数が少ないこともあり、はっきりとした答えは得られませんでした。
また、身長で4つのグループに分けて同様に前立腺がんリスクを比べましたが、いずれも関連は見出せませんでした。
日本では、体型による前立腺がんリスクの差はみられない
肥満や背の高さが国によって前立腺がんのリスク要因になったりならなかったりするのは、一つには、前立腺がんに影響を与えるホルモンの血中濃度が、体格によって大きく異なるからかもしれません。
多目的コホート集団は、欧米に比べ、肥満や背の高い男性が少なく、肥満指数では最高位のグループは25以上、身長では168cm以上と、どちらも小さめでした。もし肥満や身長の高い人がもっと多かったら、違う結果になったかもしれないとも推測されます。
いずれにせよ、今回の研究の結果、日本では、体型による前立腺がんリスクの差はみられませんでした。
詳しくは、ホームページに掲載された概要版をご覧ください。