多目的コホート研究(JPHC Study)
2012/6/7 魚、n-3不飽和脂肪酸摂取量と肝がんとの関連について
JPHC研究からの論文発表のお知らせ
多目的コホート(JPHC)研究から、魚、n-3不飽和脂肪酸摂取量と肝がんとの関連を検討した研究の結果が発表されました。
この論文の状況と担当者は以下のとおりです。
Gastoenterology 2012年 142巻 1468-75ページ
n-3不飽和脂肪酸の多い魚・n-3不飽和脂肪酸の摂取量が多いグループの肝がんリスクは低い
魚にはn-3不飽和脂肪酸が多く含まれていますが、その摂取と肝がん発生との関連を調べる研究はこれまでほとんど行われていません。
多目的コホートの男女約9万人のうち、11年の追跡期間中に398人が肝がんと診断されました。生活習慣に関するアンケートから計算された魚、n-3全体および個別の不飽和脂肪酸の摂取量によって、5つのグループに分けて、最も少ないグループに比べ、その他のグループで肝がんのリスクが何倍になるかを調べました。
分析の結果、その結果、n-3不飽和脂肪酸を多く含む魚、および、EPA・DPA・DHAといった魚に多く含まれているn-3不飽和脂肪酸を多くとっているグループほど、肝がんの発生リスクが低いことがわかりました。
肝がんの多くは、B型・C型肝炎ウイルスの感染者から発生しますので、ウイルスの感染状況がわかっている方のうち陽性者に限った解析も行いましたが、結果は、ほとんど変わりませんでした。
この研究でみられた肝がんリスクの低下の理由には、n-3不飽和脂肪酸による抗炎症作用やインスリン抵抗性の改善が考えられます。
今回の研究は、n-3不飽和脂肪酸が肝がんのリスクを下げる可能性を報告したはじめての研究であり、肝炎ウイルス感染者の肝がん予防という観点からも有用なエビデンスを示したものと考えます。
詳しくは、ホームページに掲載された概要版をご覧ください。