多目的コホート研究(JPHC Study)
2005/9/14 女性ホルモンと肺がんリスクについて
多目的コホート(JPHC)研究から、女性ホルモンと肺がんリスクの関係を調べた報告が論文発表されました。(「インターナショナル・ジャーナル・オブ・キャンサー」WEB先行公開)この結果は、札幌で行われる日本癌学会学術総会で9月15日に発表される予定です。
たばこを吸わない女性の肺がんの原因は
日本では、肺がんになる人が年々増加しています。最大の原因は喫煙ですが、たばこを吸わない人も肺がんになり、喫煙率の低い女性の肺がんも増えています。
ホルモンに依存して成長するタイプのがん細胞は、乳がんではよく知られていますが、肺がんでも検出されることがあります。そのため、女性ホルモンの状態と肺がんリスクの関連を調べる疫学研究が、欧米を中心にいくつか報告されています。しかし、結果はまちまちで、まだ結論には至っていません。
そこで、多目的コホート研究では、たばこを吸ったことがない女性を対象に、初経から閉経までの年数やホルモン剤の使用など、女性ホルモンに関わる要因について、肺がんリスクとの関連を調べました。これは日本では初めて、コホート研究では世界で2つ目の報告になります。
この研究の対象となったのは、40−69歳の女性約4万5千人です。8から12年の追跡期間中に153人が肺がんと診断されました。
女性ホルモンで、肺がんリスク高く
まず、初潮から閉経までの年数が短いグループでは、肺がんリスクが低く抑えられました。初潮の年齢を15歳以下と16歳以上、閉経の年齢を50歳以下と51歳以上にグループ分けして、4つのグループで肺がんリスクを比べました。
初潮から閉経までの年数が最も短かったグループ(初潮16歳以上で閉経50歳以下)の肺がんリスクを 1 とすると、他の3つのグループではいずれも 2 より高くなり、最も長かったグループ(初潮15歳以下で閉経51歳以上)では 2.2 、そのうち子宮摘出術などで人工的に閉経を迎えた人を除くと2.8になりました。
また、人工閉経でしかもホルモン剤を使用したことがあるグループでは、人工閉経でホルモン剤を使用しなかったグループや、ホルモン剤の使用にかかわらず自然閉経したグループに比べ、肺がんリスクが高くなりました。
出産回数、初産時年齢、授乳したかどうかなど、他の生殖関連要因は、肺がんリスクとは関連がみられませんでした。
さらに検討が必要
今回の調査では、1920年代後半生まれの女性の平均初潮年齢は16歳であったのに対し、1940年代後半生まれの女性では14歳でした。日本が豊かになるにつれて、女性の初潮から閉経までの年数も長くなり、肺がんリスクの特に低いグループが少なくなっていることが考えられます。
ホルモンと肺がんリスクの関連やメカニズムについては、今後もさらに検討を重ね、解明されなくてはなりません。ただし、ホルモンに関わる環境を自分の努力で変えることは難しいので、肺がん予防のためには、最大の要因であるたばこを吸わないこと、他人のたばこの煙を避けることが大切です。
詳しくは、ホームページに掲載された概要版をご覧ください。