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多目的コホート研究(JPHC Study)

2005/5/12 食生活パターンと大腸がんリスクについて

多目的コホート(JPHC)研究(主任研究者:津金昌一郎・国立がん研究センター予防研究部部長)から、食生活パターンと大腸がんリスクの関係を調べた報告が論文発表されました。(「インターナショナル・ジャーナル・オブ・キャンサー」2005年5月12日発行,Volume115, Pages 790-798.

日本人の3つの食生活パターンとは

普段から人によってよく食べるもの、あまり食べないものがあります。大勢の人の食事内容を調べ、その傾向を整理すると、日本人の食生活のパターンがみえてきます。食生活パターンを使うと、個別の食品や栄養素だけを取り上げたときには見落とされがちな食事の総合的な作用と生活習慣病の関係をとらえることができます。

そこで、まず多目的コホート研究参加者のうち男女約4万人の44項目にわたる食事頻度調査の結果から、日本人にみられる主要な食生活パターンを導き出すことにしました。最終的に、三つの食生活パターンを決めることができました。野菜や果物などが多い「健康型」、米飯、味噌汁、塩蔵食品などが多い「伝統型」、肉類、パンやバターなどが多い「欧米型」です。

女性の「欧米型」と「伝統型」で結腸がんリスク

次に、その三つの食生活パターンのそれぞれについて、パターンの度合いの強さによって対象者を4つのグループに分け、大腸がんリスクを比べてみました。すると、女性では、一見相反する「欧米型」と「伝統型」度の強いグループで、ともに大腸がんがんリスクが高くなっているようでした。一方、男性では、食生活パターンと大腸がんリスクにははっきりとした関連はみられませんでした。

さらに大腸を直腸と結腸に分け、食生活パターンごとにがんリスクを比べてみました。すると結腸がんでのみ、女性の「欧米型」度の強いグループと「伝統型」度の最も強いグループでリスクが高くなりました。男性ではどちらも食生活パターンとの関連がみられませんでした。

なぜ「欧米型」がリスクに?

この結果について、分析を担当した大谷哲也・国立がん研究センター予防研究部研究員は、次のように述べています。

「欧米の研究では、牛肉、豚肉、羊肉などの赤身肉や、ベーコンなどの加工肉を特徴とする欧米型の食生活がリスクであるとの報告が多く、今回の女性の結果はそれに一致するものとなった。また伝統型に関しても、その特徴となる塩蔵品は大腸がんと関連があるという研究報告がある。
しかしながら、日本では、大腸がんのリスクとなる個々の食事項目に関する研究は、まだこれからという段階である。多目的コホート研究でも、現在のところ、魚と野菜・果物は関係ないというにとどまり、肉や塩蔵品など、今回関係の見られた食生活パターンに関係する個々の項目については、まだ結果が出ていない。
今回、食生活パターンとの関係は浮かび上がらせることはできたが、食生活をどう変化させることで大腸がんを予防できるかについては、今後発表される研究結果を待ってから判断する必要がある。」


詳しくは、ホームページに掲載された概要版をご覧ください。

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