多目的コホート研究(JPHC Study)
2005/5/9 野菜・果物と大腸がんリスクについて
多目的コホート(JPHC)研究から、野菜・果物と大腸がんリスクについて検討した論文が発表されました。( 「ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・キャンサー」2005年5月9日号 )
その結果、野菜・果物をたくさん食べるグループでも、大腸がんリスクは低くありませんでした。日本で最近大腸がんが増えていますが、それは野菜や果物の摂取量とは関係なさそうです。
野菜・果物と大腸がんリスク
多目的コホートで、食物の摂取頻度についてのアンケート調査から、1日あたりの野菜全体または果物全体の摂取量をひとりひとり算出しました。それぞれ4つのグループに分け、約10年の追跡期間中に発生した大腸がんのリスクを比較しました。すると、男女とも、野菜でも果物でも、最もよく食べるグループのリスクは、最も少ないグループより低くありませんでした。さらに大腸がんを結腸がんと直腸がんに分けて調べましたが、やはりグループによるリスクの差はありませんでした。
最近の大規模研究でも否定的
この結果は、野菜と果物の摂取量と大腸がんリスクの関連について、日本で行われた前向きコホート研究からの最初の報告になります。かつて、野菜や果物による大腸がん予防の可能性について、盛んに報告されたことがありました。これについて、今回の研究を担当した坪野吉孝・東北大学教授は、「欧米での最近の大規模な追跡調査では、野菜や果物の大腸がん予防効果を留保したり限定したりする報告が続いている。日本人を対象とする今回の研究でも同じ結果だった。この研究だけで野菜や果物の大腸がん予防効果をすっかり否定できるものではない。とはいえ、日本人の大腸がんの急増は、少なくとも野菜や果物の不足で説明できるものではなさそうなことが分かった。」と述べています。
胃がんには予防効果
同じ多目的コホート研究の同様の調査結果から、野菜・果物摂取による胃がん予防効果が確認されました(2002年に報告)。ですから、大腸がんについても、もし予防効果があったならば測定できたはずです。最近日本では大腸がんが男女とも増加していますが、同時に野菜や果物摂取量も増加していることがわかっています。それに加えて今回の結果からも、やはり野菜や果物では日本の大腸がん増加を説明できなさそうです。
詳しくは、ホームページに掲載された概要版をご覧ください。