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多目的コホート研究(JPHC Study)

野菜・果物摂取と大腸がんとの関係について

―多目的コホート研究(JPHC研究)からの結果―

私たちは、いろいろな生活習慣とがん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防に役立てるための研究を行っています。 平成2年(1990年)と平成5年(1993年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部(以上コホートI)、茨城県水戸、新潟県柏崎、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古(以上コホートII)という9地域にお住まいの、40から69歳の男女約9万人の方の方々に、食事や喫煙などの生活習慣に関するアンケート調査を実施しました。その後コホートIは10年間、コホートIIは7年間追跡し、野菜・果物の摂取量と大腸がん発生率(リスク)との関係を調べた結果を、専門誌で論文発表しました(British Journal of Cancer 2005年92巻1782-1784ページ)。
この前向き追跡研究によって、野菜・果物をたくさん食べても大腸がんのリスクは低くならないということが示されました。

野菜・果物をたくさん食べても大腸がんリスクは変わらず

一般に、大腸がん予防に野菜・果物の摂取が重要と言われています。それは10年から20年ほど前に盛んに行われた研究の結果によるものです。ところが最近、より大規模な欧米の研究で、野菜や果物と大腸がんとの関係は、あってもごくわずかという結果が相次いで出されています。今回の研究で、私たち日本人ではどうなのかを確かめてみました。

図1.野菜摂取と大腸がん罹患

追跡期間中に、約9万人中705人の方が大腸がんになりました。研究参加者を野菜・果物の摂取量によって4つのグループに分けて、摂取量がもっとも少ないグループに比べその他のグループで大腸がんのリスクが何倍になるかを調べました。大腸がんのリスクは年齢、喫煙、飲酒によって高まることがわかっていますので、あらかじめその影響を除いた上で、野菜・果物と大腸がんとの関連を検討しました。その結果、大腸がんのリスクは高くも低くもなりませんでした。大腸の部位で結腸と直腸に分けても、男女で分けても結果は変わりませんでした。また喫煙しない人、飲酒しない人などのグループに分けてみても同じ結果でした。

図2.果物摂取と大腸がん罹患

本当に野菜・果物は大腸がんを予防しないのでしょうか?

日本では、大腸がんの罹患や死亡はここ20年から30年で急速に増加してきました。しかし、野菜・果物の摂取量も同時に増加してきていることが確認されています。今回の研究結果もこの事実に即しており、野菜・果物の摂取が少ないことは、大腸がん増加の主要な要因とはなりえないことを示しています。しかし、大腸がん予防に野菜・果物は効果がないと断言することは早計です。世界保健機構(WHO)と食糧農業機関(FAO)合同での2003年の報告では、野菜果物は予防効果があるとすればそれはわずかなものであるとしながらも、おそらく予防的と述べています。また、国際がん研究所(IARC)の同じ2003年の報告では、これまでの疫学研究・動物実験などをまとめ、野菜・果物の大腸がんの予防効果を示す証拠は限定的ながら、野菜摂取はおそらく予防的だろうと述べられています。また、果物摂取も予防の可能性はあると評価されています。これらを考え合わせると、野菜・果物摂取に、今回の研究では明らかにできなかったごくわずかな予防効果がないとは言い切れません。また、野菜・果物の摂取は胃がん予防には有効であることがすでに示されており(野菜・果物摂取と胃がん罹患を参照)、多くの循環器疾患の予防に有用であることがわかっているので、野菜・果物摂取は奨励すべき生活習慣であることに変わりありません。

多目的コホート研究からの野菜・果物に関連する成果:野菜・果物摂取と胃がん罹患野菜・果物摂取量と肺がん

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