多目的コホート研究(JPHC Study)
2005/2/16 コーヒーと肝がんリスクについて
多目的コホート(JPHC)研究から、コーヒーと肝がんリスクについて検討した論文が発表されました。( 「ジャーナル・オブ・ザ・ナショナル・キャンサー・インスティテュート」2005年2月16日号 )
その結果、コーヒーを毎日飲むグループではほとんど飲まないグループに比べて肝がんリスクが低く抑えられ、しかも、1日あたりのコーヒー量が多くなるにつれて肝がんリスクが低くなることが確認されました。
コーヒーをよく飲むグループでは肝がんリスクが低い
多目的コホートをコーヒー摂取頻度によってグループ分けして、約10年の追跡期間中に発生した肝がんのリスクを比較しました。すると、毎日飲むグループのリスクはほとんど飲まないグループの約半分に抑えられました。さらに1日当たりに何杯飲むかによってグループ分けすると、多ければ多いほどリスクが低くなり、1日5杯以上のグループのリスクはほとんど飲まないグループの約4分の1になりました。
コーヒーの肝がん予防効果
この研究を報告した井上真奈美・国立がん研究センター予防研究部室長によれば、コーヒーのどの成分がどのようにはたらいて肝がんリスクを抑えることができるのかについては、まだよくわかっていません。多目的コホートでは、緑茶ではコーヒーのように肝がんリスクが低下しなかったことから、どちらにも含まれるカフェインよりはむしろコーヒー独自の成分による可能性が高いといえるでしょう。
さらに、この研究でコーヒーに肝がん予防効果があるようにみえるのは、実は肝臓に障害がある人でコーヒーが飲めなくなっていることを示しているにすぎないという可能性も否定できません。コーヒーに本当に肝がん予防効果があるのかを確認するには、今後さらに詳しく研究を進める必要があります。
コーヒーと肝炎ウイルスと肝がん
肝がんの多くは、B型・C型肝炎ウイルスの感染が慢性化し、肝炎から肝硬変を経て発生することがわかっています。現在40歳以上の日本人にはC型肝炎ウイルスに持続的に感染している人が少なくなく、そのために肝がんの発生率も高いことが知られています。肝がん予防で最も大切なことは、まず原因ウイルスに感染しないこと、感染がわかったら早い段階で専門家の治療を受け、病気の進行を遅くすることです。
日本の肝がんは90%以上が肝炎ウイルス感染によるものであり、コーヒーで本当に肝がんが予防できるのかどうか、肝炎ウイルスを考慮せずに論じることはできません。B型・C型肝炎ウイルスに持続感染している肝がんのハイリスク・グループを特定し、その中でコーヒーの肝がん予防効果を検証することが次の課題です。
詳しくは、ホームページに掲載された概要版をご覧ください。