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多目的コホート研究(JPHC Study)

2016/1/21 歩行時間と糖尿病のリスクとの関連

JPHC研究からの論文発表のお知らせ

 

多目的コホート(JPHC)研究から、歩行時間と糖尿病のリスクとの関連を検討した研究結果が発表されました。この研究により、1日の歩行時間が少ない群において糖尿病のリスクが高いことが示されました。

 

この論文の状況は以下の通りです。

Journal of Epidemiology 2015年12月Web先行公開

 

1日の歩行時間が少ない群において、自覚していない糖尿病のリスクが高い

 

身体活動度を上げることが糖尿病発症に対して予防的に働くことはすでに報告されています。今回は身体活動の中でも歩行という多くの人にとって実践しやすい活動に注目しました。歩行に関してもすでに研究が行われており、糖尿病のリスクを下げることが欧米の研究では報告されています。しかし、アジア人、さらには日本人を対象とした研究ではその関係が十分に明らかにされていないため、本研究において、歩行時間と糖尿病リスクとの関係を調べました。

 多目的コホート研究で1998~2000年度に実施した糖尿病調査に参加した人のうち、自分に糖尿病があることを自覚している人を除外した26,488名(調査時平均年齢62歳, 男性36%)を対象として、1日の歩行時間と自覚していない糖尿病(血糖値やヘモグロビンA1cを検査して初めて判明する糖尿病)を有することとの関係を検討しました。この調査では、1,058名に自覚していない糖尿病があることが判明しました。

 

解析の結果、1日の歩行時間が2時間以上の群に比べ、1時間‐2時間未満、30分‐1時間未満、30分未満の3つの群において自覚していない糖尿病を有するリスクは、それぞれ1.04、0.99、1.23倍であり、1日の歩行時間が30分未満の群においてリスクが高いことがわかりました。

 

さらに、多目的コホート研究で1998~2000年度に実施した糖尿病調査で糖尿病がない人のうち2003~2005年度に実施した糖尿病調査に参加した11,101人(調査時平均年齢62歳, 男性33%)を対象として1日の歩行時間と5年間の糖尿病発症との関係を検討しました。この5年間に612名が新たに糖尿病を発症しました。

 

解析の結果、1日の歩行時間が2時間以上の群を基準とすると、1時間‐2時間未満、30分‐1時間未満、30分未満の3つの群の5年間の糖尿病発症のリスクは、それぞれ1.10、1.12、1.10倍でしたが、この結果は統計学的に有意ではありませんでした。

 

以上の結果から、歩行時間の少ない人における糖尿病リスクの上昇が示唆されました。1日の歩行時間とその後5年間の糖尿病発症とのリスクの関連が見られなかったのは、解析対象者の人数や追跡期間の長さ、また健康に対する意識の高い参加者が多かったことなどが理由として考えられます。また、1日の歩行時間は、個人のさまざまな生活習慣や健康に対する態度とも関係すると考えられ、こうした要因が糖尿病のリスクに影響を与えている可能性も検討する必要があります。

 

日常生活における歩行数の増加は厚生労働省が掲げる健康日本21(第二次)においても、国民の健康水準を上げる一つの目標とされており重要なテーマです。今回、日本人を対象とした研究で、歩行時間と糖尿病リスクとの関係が示せたことは、こうした健康増進を推進するためのさらなる根拠となりうるものと考えられます。

 

詳しくは、ホームページに掲載された概要版をご覧ください。

 

歩行時間と糖尿病のリスクとの関連

 

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