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多目的コホート研究(JPHC Study)

2004/10/25 飲酒と2型糖尿病の発症について

多目的コホート(JPHC)研究から、2型糖尿病のさまざまなリスクについて検討した論文が発表されました。(「ダイアベティック・メディシン」オンライン先行公開2004年10月20日)

その結果、肥満指数(BMI)22以下のやせている男性グループでは、飲酒によって2型糖尿病リスクが上昇することがわかりました。

BMI = 体重[kg] ÷ ( 身長[m]×身長[m] )

2型糖尿病のリスク

2 型糖尿病のリスクとして、加齢、肥満、遺伝因子(血縁に糖尿病があること)はよく知られています。多目的コホートでも、これらのリスクがみられました。さらに、女性よりは男性で発症率が高いこと、また高血圧、1日20本以上の喫煙でも男女ともにリスク上昇が確認されました。
お酒については、男性で、1日当り日本酒換算で1合(エタノールで23g)以上飲むグループで、まったく飲まないグループに比べ、2型糖尿病リスクが30%高くなりました。女性では飲酒によるリスクの差がみられませんでしたが、これはお酒を飲む人が少なかったため、十分なデータが得られなかったことが原因と考えられます。

やせている男性は、飲酒で糖尿病リスクが上がる

糖尿病にはお酒は良くないだろうと考えがちですが、これまでの疫学研究では必ずしも結果が一致していません。各国の最近のコホート研究の結果でも、飲めば飲むほどリスクが下がるという報告があった一方で、少量の飲酒が最も予防的というものや、逆に飲酒によってリスクが上がるというものもありました。
さらに、BMIの小さい、やせ型グループに限って飲酒のリスクが上昇するという報告もありました。そこで、多目的コホート研究でも、飲酒のリスクがみられた男性について、さらにBMIでグループ分けして、それぞれのグループで2型糖尿病の発症リスクがどうなっているかを調べてみました。
すると、BMIが22以下のやせ型グループでは、飲酒量が増えるにつれて糖尿病リスクも上昇し、まったく飲まないグループに比べ日本酒換算で1日あたり 1 - 2合飲むグループで1.9倍、2合を超えるグループでは2.9倍になりました。BMIが22より大きいグループでは、飲酒量によるリスクの差はみられませんでした。2型糖尿病に関しては、さいわい肥満のなかったグループで、あいにく飲酒がリスクになるということがわかりました。
それにしても、なぜ、男性のやせ型の人でだけ、飲酒によって糖尿病のリスクが上がったのでしょうか。この結果を報告した野田光彦・虎の門病院内分泌代謝科部長は、やせ型の人には、もともと血糖をコントロールするインスリンの分泌能力の低い人が多いと考えています。長期にわたる飲酒習慣にはインスリンの分泌を低下させる作用が報告されており、やせ型の男性でその影響が強調されたのではないかと推察しています。

詳しくは、ホームページに掲載された概要版をご覧ください。

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