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多目的コホート研究(JPHC Study)

2004/9/27 魚・n-3脂肪酸摂取と大腸がん罹患

多目的コホート(JPHC)研究から、魚・n-3 脂肪酸摂取と大腸がん罹患を調べた論文が発表されました。( 「ニュートリション・アン ド・キャンサー」Volume 49 Page 32-40)
その結果、魚をよく食べるグループでも大腸がんリスクは下がりませんでした。

魚 vs. 肉

大腸がんは欧米に多くアジアに少ないのですが、その理由として食生活の違いが考えられます。その一つに、肉よりも魚がよく食べられている国では大腸がんが少ないという可能性が挙げられます。実際に、動物実験レベルでは、魚に多く含まれる n-3 多価不飽和脂肪酸(n-3 PUFA)によって大腸がんが予防できるという研究結果がいくつか報告されています。そこで、魚に大腸がん予防効果があるという仮説がJPHC 研究で成り立つかどうかを検証してみました。

栄養学メモ:魚と n-3 PUFA
魚には DHA(ドコサヘキサエン酸)や EPA(エイコサペンタエン酸)という n-3 PUFA が多く含まれています。魚油に多く含まれる脂肪酸には炭素数が多く、二重結合が多いという特徴があります。また、n-3 PUFA をがん治療に補助的に用いることによる延命効果を報告する論文も複数あり、その働きが注目されている栄養素のひとつです。

魚と大腸がんリスクは無関係

その結果は、魚の摂取量が多くても少なくても大腸がんリスクは変わらないというものでした。部位別にみても、結腸がん、直腸がんのどちらも、魚を多く食べるグループでリスクは下がりませんでした。 また、この研究では魚に含まれる n-3 PUFA に注目したわけですが、n-3 PUFA は摂取量だけでなくn-6 PUFA とのバランスが肝心だと考えられています。そこで、この研究では、さらにn-6 系多価飽和脂肪酸に対する n-3 系の比率についても調べてみました。しかし、比率が多くても少なくても、やはり大腸がんリスクとの関連はみられませんでした。

栄養学メモ:必須脂肪酸のバランス
n-3 PUFA とn-6 PUFA は細胞膜やホルモンを作る原料として生命の維持に重要な役割を果たす栄養素であり、必須脂肪酸と呼ばれています。どちらも体内で産生されることがなく、食事を通じて摂取する必要があります。ただし、この二種類の脂肪酸のバランスの悪さが健康に影響するのではないかと指摘されています。 n-3 PUFA の主な摂取源は魚に限られますが、n-6 PUFA は一般的な植物油に多く含まれています。欧米型の食生活では n-3 PUFA に対し、n-6 PUFAを多くとり過ぎることになり、それが心臓病やアレルギー、大腸がん・乳がん・前立腺がんなど欧米に多いがんの発生に関連していると推定する報告があります。

それでも魚を食べましょう

日本では他の国と比べ魚がよく食べられています。そのため、最も魚を食べないグループでも、大腸がんの予防に十分な量の n-3PUFA をとっていたという可能性があります。いずれにしても今回の研究からは、ほとんど魚を食べない人の大腸がんリスクが上がるかどうかを調べることはできませんでした。 今回の研究で大腸がんリスクが下がらなかったといっても、魚を食べなくても良いということにはなりません。魚を多く食べる人で大腸がんリスクが上がったわけではないのですから。しかも、n-3PUFA は脳卒中や心筋梗塞を予防するという報告もあります。全般的な健康を考えると、肉ばかりを食べるよりは、魚も食べるようにしたほうが良いでしょう。

詳しくは、ホームページに掲載された概要版をご覧ください。

また、詳細版はこちらからご覧いただけます。

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