多目的コホート研究(JPHC Study)
2004/8/11 肥満度(BMI)とがん罹患
多目的コホート(JPHC)研究から、肥満指数(BMI)とがん罹患/がん死亡の関係を調べた論文が発表されました。欧米ではもっぱら肥満が問題になっていますが、日本人男性では、太りすぎばかりでなく痩せすぎによっても、がんになるリスクやがんで死亡するリスクが高くなることが示されました。
( 「キャンサー・コージズ・アンド・コントロール」Volume 15 Page 483-491.)
がんになりにくい体型
がんのリスクと予防を考えたとき、自分ではどうにもならないものと、努力次第でどうにかなるものがあります。たとえば、長身の人や肥満の人ほどリスクが高くなるがんがあることが知られています。背を低くすることはできませんが、体重ならば減らすことができます。がんになりにくい体型が割り出せたなら、自分の身長に応じた適正な体重の範囲を維持する努力で、がんリスクを減らすことができるということになります。現在、欧米では肥満を少しでも減らすことで、がんをはじめとする肥満関連の疾病を予防するプロジェクトが強力に推進されています。日本でもそれにならって、肥満は健康に良くないことがたびたび強調されています。具体的には、どのような体型でがんリスクが増えるのでしょうか。
JPHC 研究では、約9万人の参加者の肥満指数(BMI: 体重(kg)を身長(m)の二乗で割って算出)ごとにがんの発生率を比べてみました。その結果、男性ではBMIが21以上30未満のグループでがんリスクが低く、それよりBMIが大きくなっても小さくなっても、がんリスクがだんだん増えるU字型のカーブになることがわかりました。がんリスクが低い体重の範囲は、たとえば身長170cmの男性で61〜86kgにあたります。U字の底にあたる部分は意外と幅広く、それよりも太っている人の割合がわずか2.2%であったのに対し、痩せている人の割合は18.5%と多かったので、日本では肥満よりはむしろ痩せすぎの方が問題ということになります。女性では、特にがんリスクが低くなるようなBMIを決めることはできませんでした。
日本ではむしろ痩せすぎが問題
BMI が30以上の肥満の人の占める割合は、ヨーロッパで約15-20%、米国で約30%と報告されていますが、日本人ではわずか2-3%にすぎません。このように肥満度の分布がまったく違うため、「太っている」という感覚も異なります。ですから、肥満がよくないという場合には、ただ太っているのが良くないと思い込まずに、BMIで客観的に評価してみましょう。
また、日本のように痩せているグループの占める割合が大きい国では、肥満と同じくらい、痩せすぎによるがんリスクも問題になります。JPHC研究で、さらにがんの死亡率とBMIの関係を見てみました。すると、がん死亡リスクでは痩せすぎの影響がより一層強くなることがわかりました。非常に痩せている人では、がんになった後の回復力も弱いのではないかと推察されます。日本では、肥満と同じくらい、痩せすぎにも十分注意する必要があるのです。
なお、BMIと総死亡の関係についてはすでにJPHC研究から報告し、同様の結論を得ていますのでご参照ください(3. 肥満指数と死亡率との関係について)。
詳しくは、ホームページに掲載された概要版をご覧ください。
また、詳細版はこちらからご覧いただけます。