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多目的コホート研究(JPHC Study)

野菜・果物摂取量と肺がんとの関連について

多目的コホート研究(JPHC研究)からの結果

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防に役立てるための研究を行っています。
平成2年(1990年)と平成5年(1993年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部(以上コホートI)、茨城県水戸、新潟県柏崎、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古(以上コホートII)という9地域にお住まいの、40〜69歳の男女約9万人の方々に、食事や喫煙などの生活習慣に関するアンケート調査を実施しました。その後コホートIは10年間、コホートIIは7年間追跡し、野菜・果物摂取と肺がん発生率(リスク)との関係を調べた結果を、専門誌で論文発表しました(Cancer Cause Control 2004年15巻349-357ページ)。この前向き追跡研究によって、野菜・果物の摂取で肺がんリスクは下がらないことが分かりました。

野菜・果物を多くとっても肺がんは予防できない

追跡期間中に428人(男性329人、女性99人)の方が肺がんになりました。食事調査票から果物と野菜の摂取量を計算し、「低」、「中」、「高」の3つのグループにほぼ同様の人数になるように分けました。そして「低」グループの肺がんリスクを基準値"1"とした場合に、「中」グループと「高」グループの肺がんリスクがその何倍になるかを算出しました。なお、野菜・果物を多くとる人では、年齢が高い、余暇の運動量が多い、喫煙者が少ないなど健康的な生活をしている傾向がありましたので、それらの影響を取り除いて結果を出しました。すると、下のグラフのように、野菜摂取量、果物摂取量、及び野菜+果物摂取量には、いずれも肺がんリスクとの関連はみられませんでした。

図1.野菜・果物摂取量と肺がんリスク

組織別や喫煙状態で見た肺がんリスクと野菜・果物摂取量の関係

もう少し詳しく野菜・果物と肺がんのリスクの関係をみてみました。肺がんは腺がんと非腺がんに分けられます。非腺がんは喫煙との関係がより深く、野菜・果物による予防効果もより鮮明であるとされています。しかし、下のグラフのように、野菜・果物摂取量は腺がんにも、非腺がんにも予防的な効果は見られませんでした。さらに、喫煙者と非喫煙者で分けてみても、野菜・果物摂取量と肺がんとのはっきりとした関連は確認できませんでした。

図2.野菜・果物の摂取と組織別の肺がんリスク

肺がん予防にはまず禁煙を

これまで多くの研究から、野菜・果物を多くとると、肺がんリスクが下がると報告されていますが、今回の研究結果では野菜・果物による肺がん予防効果は確認できませんでした。喫煙は肺がんの最も大きなリスクです。そのことは、 JPHC研究の結果でもはっきりと示されました(喫煙と肺がん罹患)。野菜・果物を多くとる人では喫煙率が低い傾向がありますので、「野菜・果物に肺がん予防効果あり」とする研究では、喫煙の影響を除ききれなかったという可能性があります。

しかし、野菜・果物は胃がんや大腸がんなどいくつかのがんには予防的であるといわれ、胃がん予防効果はJPHC研究からもすでに報告されています(野菜・果物摂取と胃がん罹患)。野菜・果物の効果を総合的に評価し、全般的な健康維持のためには野菜・果物の豊富な食生活を心がけましょう。

また、肺がん予防に関しては、いくら野菜や果物を食べても喫煙によるリスクを減らすことはできませんので、やはりたばこをやめるのが最も効果的な予防法といえます。

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