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現在までの成果

n-3およびn-6不飽和脂肪酸摂取と大腸がんとの関連について

-「多目的コホート研究(JPHC研究)」からの成果-

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防に役立てるための研究を行っています。平成7年(1995年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の10保健所(呼称は2009年現在)管内にお住まいだった、45~74歳の男女約8万9千人を平成18年(2006年)まで追跡した調査結果にもとづいて、n-3およびn-6不飽和脂肪酸摂取量と大腸がんとの関連を調べた結果を専門誌で論文発表しましたので紹介します( Internal Journal of Cancer 2011年 129 巻 1718 -1729 ページ )。

今回の研究対象に該当した男女約8万9千人のうち、11年の追跡期間中、1268人(男性774人、女性494人)が大腸がんと診断されました。アンケートから計算されたn-3、n-6、およびそれぞれ個別の不飽和脂肪酸摂取量によって、5つのグループに分けて、最も少ないグループに比べ、その他のグループで大腸がんのリスクが何倍になるかを調べました。

 

魚由来のn-3不飽和脂肪酸およびトータルのn-3不飽和脂肪酸摂取量が多いグループの結腸がんリスクは低い

その結果、魚由来のn-3不飽和脂肪酸(EPA, DHA, DPA)および、トータルのn-3不飽和脂肪酸を多くとっているグループほど、結腸(特に近位部)のがんの発生リスクが低いことが分かりました。男性の結腸がんの内訳は遠位結腸の方が多いため、結腸全体で見ると、関連は少し弱まりました。一方、女性では近位結腸の方が圧倒的に多いため、結腸全体で見ると、関連はよりはっきりしました。

また、直腸のがんに対しては、n-3不飽和脂肪酸は特に有意な関連を示しませんでした(図)。

 

n-6不飽和脂肪酸およびn-3/n-6比は大腸がんのリスクと関連がみられない

また、一般的な食用油としてとることが多いn-6不飽和脂肪酸ですが、男性の近位結腸でリスクの低下が見られたものの、全体としては大腸がんのリスクとは特に関連はみられませんでした(図)。同様に、n-3/n-6比についても同様に特に関連は見出されませんでした。

 

 

図  n-3およびn-6不飽和脂肪酸摂取と大腸がんとの関連

図. n-3およびn-6不飽和脂肪酸摂取と大腸がんとの関連

 

 

n-3不飽和脂肪酸はとればとるほどよいのか

魚に代表されるn-3不飽和脂肪酸による大腸がんリスクの低下は、大腸の近位部(結腸、あるいは近位結腸)においてみられましたが、遠位部(遠位結腸や直腸)では見られませんでした。食事要因、身体活動、喫煙、胆嚢摘出術など、大腸がんとの関連が部位により異なる要因はこれまでにも指摘されています。発酵反応やn-ニトロソ化合物への暴露が大腸の部位によって異なるなどの報告もあります。たとえば、国際がん研究機関(IARC; International Agency for Research on Cancer) により大腸がんは近年、タバコ関連がんに含まれましたが、たばこは大腸の中でも、直腸がんとの関連がより明瞭です。n-3不飽和脂肪酸と直腸がんとの関連を解析する中で、可能な限りこのような要因の影響は調整しますが、それでも調整しきれない影響が残った結果として、直腸がんではn-3不飽和脂肪酸との間にはっきりとした関連を認めなかったのかもしれません。

 

大腸がん予防のためには、飲酒・喫煙などの習慣を適正に維持しつつ、魚を食べるときには、さまざまな食品と共に、バランスのよい食事をこころがけるのがよいでしょう。

 

n-6不飽和脂肪酸と大腸がん

これまでの研究では、n-3およびn-6不飽和脂肪酸はそれぞれ抗炎症・炎症にかかわる役割から、大腸発がんにおいてはお互いに拮抗的に作用するとの考えが一般的でした。しかし、近年のアメリカ心臓協会(AHA; American Heart Association)の報告によると、n-6不飽和脂肪酸は心臓病を避けるための’有益な’脂肪と位置づけられています。なお、n-3不飽和脂肪酸、単価不飽和脂肪酸、飽和脂肪酸およびトランス脂肪酸はそれぞれ’非常に有益’、’良好’、’避けるべき・限定するべき’とされています。

n-6不飽和脂肪酸にはインスリン抵抗性の改善、糖尿病リスクの低下、血圧の低下などの作用があることも分かってきました。このような観点からもn-6不飽和脂肪酸は大腸がんのリスクを必ずしも上げるものとはいえないでしょう。このような理由からn-3/n-6不飽和脂肪酸比と大腸がんとの間にも特に関連はみられなかったと考えられます。

 

過去の研究結果と比べて

私たちは過去に魚・n-3不飽和脂肪酸と大腸がんとの関連について、すでに検討しており、魚と大腸がんとの間には特に関連はないと結論しています。

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より詳細な食事調査票によりn-3不飽和脂肪酸を算出した点、および症例数の増加により詳細部位別に大腸がんとの関連について検討できた点が今回の新しい点です。今後も多くの研究により、大腸がんのリスク要因・予防要因についての知見が蓄積されることが待たれます。

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