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現在までの成果

大豆食品、発酵性大豆食品の摂取量と死亡リスクの関連

 ―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告―

 

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防と健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。平成2年(1990年)と平成5年(1993年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、東京都葛飾区、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の11保健所(呼称は2020年現在)にお住まいだった40~69歳の方々のうち、研究開始から5年後に行った食事調査票に回答し、がん、循環器疾患になっていなかった約9万人を、平成24年(2012年)まで追跡した調査結果にもとづいて、大豆食品、発酵性大豆食品摂取量とその後の死亡リスクとの関連を調べた結果を専門誌で論文発表しましたので紹介します(BMJ 2020年1月)。

近年、植物性の食品の一つとして大豆食品を多く摂取することの健康への影響について関心が高まっています。大豆にはたんぱく質や食物繊維、ミネラル、イソフラボンなどの様々な成分が含まれ、特に納豆や味噌といった発酵性大豆食品は加工中にこれらの成分の消失が少ないことから、これまでにも発酵性大豆食品摂取と血圧の関連や納豆の摂取と循環器疾患死亡リスクとの関連などが報告されてきましたが報告数は限られていました。また、大豆食品全体と死亡リスクの関連はこれまでの研究ごとに結果が異なっているほか、発酵性大豆食品と死亡リスクの関連についての報告は限られていました。そこで、私たちは、多目的コホート研究において、大豆食品、発酵性大豆食品摂取量と死亡リスクとの関連について検討しました。

研究開始から5年後に行なったアンケート調査の結果を用いて、総大豆食品・発酵性/非発酵性大豆食品・各大豆食品(納豆、味噌、豆腐)の摂取量を計算し、等分に5つのグループに分け、その後、平均約15年間の死亡(総死亡・がん死亡・循環器疾患死亡・心疾患死亡・脳血管疾患死亡)との関連を男女別に調べました。分析にあたって、年齢、地域、肥満度、喫煙、飲酒、身体活動、糖尿病(または服薬)の有無、降圧薬服薬の有無、健診受診の有無、月経状況(女性のみ)、ホルモン剤の使用(女性のみ)、コーヒー、緑茶、魚類、肉類、果物類、野菜類、総エネルギー摂取量で統計学的に調整し、これらの影響をできるだけ取り除きました。

 

発酵性大豆食品の摂取量が多いほど総死亡リスクが低い

総大豆食品摂取量は、死亡との明らかな関連は見られませんでしたが、男女ともに発酵性大豆食品の摂取量が多いほど、死亡全体(総死亡)のリスクの低下がみられました。(図1)

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図1 総大豆食品摂取量、発酵性大豆食品摂取量と総死亡リスクの関連

 

次に、個々の大豆食品のうち納豆、味噌、豆腐について死亡リスクとの関連を検討したところ、女性では納豆や味噌の摂取量が多いほど死亡リスクが低下していましたが、男性ではその傾向はみられませんでした。豆腐については男女ともに低下の傾向はみられませんでした。(図2)

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図2 納豆・味噌・豆腐摂取量と総死亡リスクの関連

 

納豆の摂取量が多いほど循環器疾患死亡リスクが低い

死因別にみると、総大豆食品、発酵性・非発酵性大豆食品、各大豆食品の摂取量はいずれもがん死亡との関連は認めませんでしたが、循環器疾患死亡については男女ともに納豆の摂取量が多いほどリスクが低下する傾向を認めました(図3)。図3では摂取量の最も少ないグループに対する摂取量の最も多いグループのハザード比を示しています。

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図3 大豆食品摂取量とがん死亡、循環器疾患死亡との関連

 

今回の研究から見えてきたこと

今回の研究で、総大豆食品摂取量は死亡リスクとの関連がみられなかったものの、発酵性大豆食品の摂取量が多いと死亡のリスクが下がるという関連が明らかになりました。また、納豆の摂取量が多いほど循環器疾患死亡リスクが低いという関連を認めました。大豆にはたんぱく質や食物繊維、ミネラル、イソフラボンといった様々な成分が含まれ、血圧・体重・血中脂質などに良い効果を及ぼすことが先行研究から報告されています。特に、発酵性大豆食品は加工の過程で成分の消失が少ないことなどが、明らかな関連を認めた理由の一つとして考えられます。 一方、今回の研究では、大豆食品摂取量と総死亡の関連を正確に比べるために、把握できている他の 要因(年齢、地域、肥満度、喫煙、飲酒、身体活動など)について統計学的に調整しましたが、取り除ききれなかった要因や把握できなかった要因が、結果に影響した可能性があります。また、1回のアンケート調査から計算された摂取量で計算しており、追跡中の食事の変化については考慮していないという研究の限界があります。

われわれの以前の研究では、エネルギーに対する植物性たんぱく質の割合が多いほど、総死亡・循環器疾患死亡リスクが低いことを報告しています (動物性・植物性たんぱく質の摂取と死亡リスクとの関連)。今回の研究では、植物性たんぱく質の主な摂取源でもある大豆製品の中でも、発酵性大豆食品が関わっている可能性が示されました。これらは日本特有の食品でもあり、日本人の長寿の要因の一つかもしれません。

今回の研究では、循環器疾患になった人をのぞいて検討しています。循環器疾患にかかった方で、血液を固まりにくくする薬を飲んでいる方については、納豆は、その作用を弱めてしまいますので、今回の結果はあてはまりません。

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