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現在までの成果

発酵性大豆食品の摂取量と循環器疾患およびがん罹患との関連

―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告―

 

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防と健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。平成7年(1995年)と平成10年(1998年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古の9保健所(呼称は2019年現在)にお住まいだった45~74歳の方々のうち、食事調査アンケートに回答し、循環器疾患、がんになっていなかった約8万人を、平成24年(2012年)まで追跡した調査結果にもとづいて、発酵性大豆食品の摂取量と循環器疾患およびがんとの関連を調べた結果を専門誌で論文発表しましたので紹介します(Eur J Clin Nutr 2020年9月ウェブ先行公開)。

発酵性大豆食品には、イソフラボンアグリコンが多く含まれており、閉経後の女性では、動脈硬化を予防することが知られています。また、発酵性大豆食品には、血圧低下と関連することが報告されているポリアミンやスペルミジンが非発酵性大豆食品より多く含まれています。先行研究では、大豆食品の中でも発酵性の大豆食品に関する疫学研究が少なかったことから、今回は、発酵性大豆食品に着目し、循環器疾患やがんとの関連について検討しました。

今回の研究では、食事調査アンケートの結果を用いて、総大豆食品、発酵性/非発酵性大豆食品、みそ、納豆の1日当たりの摂取量を算出し、少ない順に並べて人数が均等となるよう4グループに分け、最も摂取量が少ないグループを基準として、その他のグループのその後の循環器疾患やがんの罹患を調べました。

 

女性では、発酵性大豆食品の摂取量が多いと循環器疾患、また、脳卒中のリスク低下と関連

追跡期間中に4427人(女性:1791人、男性:2636人)が循環器疾患を発症し、9972人(女性:3789人、男性:6183人)ががんに罹患しました。女性では、発酵性大豆食品の摂取量が最も少ないグループと比較して多いグループほど、循環器疾患の発症リスクが低いという関連がみられましたが、男性では関連はみられませんでした(図1)。また、女性においては、納豆や発酵性大豆食品由来のイソフラボンの摂取量においても同様の結果がみられました。次に、女性で発酵性大豆食品の摂取量と脳卒中および心筋梗塞の発症を検討したところ、発酵性大豆食品の摂取量が少ないグループに比べ、多いグループでは、脳卒中のリスクが低いという関連がみられましたが、心筋梗塞では関連がみられませんでした(図2)。全がんでは、男女とも、大豆食品の摂取量と関連はみられませんでした。

 

図1.発酵性大豆食品の摂取量と循環器疾患の発症リスク

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図2.発酵性大豆食品の摂取量と脳卒中・心筋梗塞の発症リスク (女性)368_2

  

さらなる研究結果の蓄積が必要

今回の研究では、男性では、総大豆食品の摂取量と循環器疾患のリスクとの関連は見られませんでしたが、女性では、発酵性大豆食品の摂取量が多いほど循環器疾患のリスクが低下し、さらに、発酵性大豆食品の中でも、納豆の摂取量が多いほど循環器疾患のリスク低下と関連が認められました。これまでに、私たちは、発酵性大豆食品の摂取量が多いと、循環器疾患のリスク要因の一つである高値血圧の発症リスク低下と関連があったこと(発酵性大豆製品の摂取量と高値血圧の発症との関連について)を報告しており、循環器疾患の発症リスクを検討した今回の研究でも、女性では同様の結果が示されました。理由として、発酵性大豆食品に多く含まれるイソフラボンアグリコンは動脈硬化を予防することが報告されており、発酵性大豆食品を摂取することによって、循環器疾患の発症リスクが低下したことが考えられます。なお、心筋梗塞は症例数が少なかったために関連が見られなかった可能性が考えられます。
男性では関連が見られなかった理由について、男性は女性と比べて、喫煙者や飲酒者の割合が高く、統計学的に調整するなど検討を行いましたが、喫煙や飲酒による健康への悪い影響が発酵大豆食品摂取による効果的な作用を打ち消した可能性も考えられます。また、今回の研究結果では、発酵性大豆食品と全がんとは関連がみられませんでした。先行研究ではイソフラボンと乳がんや前立腺がんのリスク低下との関連が報告されていますが、これらはがんの一部分であることや、発酵性大豆食品とがんの部位別に関する知見は少なく、発酵性大豆食品と部位別のがんとの関連を明らかにするためには、今後、さらなる研究が必要です。
みそや納豆等は日本の伝統的な発酵性大豆食品であり、これらの食品を摂取する際、野菜等、循環器疾患の発症リスクの低下との関連が報告されている食品も共に摂取している可能性があります。そのため、今回の解析では、大豆食品以外で、循環器疾患の発症リスクの低下が期待できる食品の影響を統計学的に取り除く解析を行いましたが、それらの食品が今回の結果に影響を与えた可能性を完全に否定することはできません。発酵性大豆食品と疾患に関する研究は限られており、今後も発酵性大豆食品を多く摂取している日本人やアジアのほかの国々からのさらなる研究結果の蓄積が必要です。

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