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現在までの成果

便潜血検査または大腸内視鏡検査によるスクリーニングの大腸がんリスクに対する有効性について

―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告―

 

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防や健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。平成2年(1990年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部の4保健所管内(呼称は2019年現在)にお住まいだった40~59歳の方々で、研究開始時(1990年)、5年後調査(1995年)、10年後調査(2000年)のアンケート全てにご回答くださり、10年後調査の時点でがん既往がなく追跡可能であった男女約3万人の方々を、平成25年(2013年)まで追跡した調査結果に基づいて、便潜血検査または大腸内視鏡検査の受診回数と大腸がん死亡・罹患リスクとの関連を調べた結果を専門誌で論文発表しましたので紹介します(J Epidemiol 2021年5月web先行公開)。

がん検診の効果が本当にあるかどうか判定する指標としては、死亡率が用いられ、そのがん検診を実施することにより、対象となるがんの死亡率が減少するかどうかを見ます。日本の有効性評価に基づく大腸がん検診ガイドラインでは、便潜血検査(特に免疫法)は死亡率減少効果を示す十分な証拠があることから、対策型検診(注1)及び任意型検診(注2)として強く推奨されています。また、全大腸内視鏡検査は安全性を確保し不利益を十分説明した上で、任意型検診として行うことは可能とされています。
(参考:国立がん研究センター がん検診ガイドライン
 注1:対策型検診とは、集団全体の死亡率減少を目的として実施するものを指し、公共的な予防対策として行われます。
 注2:任意型検診とは、対策型検診以外の検診が該当します。
(参考:国立がん研究センター 対策型検診と任意型検診

大腸がん検診の効果を評価した研究結果はこれまでも報告されていますが、ある一時点の検診受診の有無のみを利用していることが多く(参考:JPHC大腸がん検診受診と大腸がん死亡率との関係)、また、便潜血検査と大腸内視鏡検査を同時に評価した研究はほとんどありません。そのため、本研究では、複数の時点における便潜血検査と大腸内視鏡検査の回数や受診時期と大腸がん死亡・罹患リスクとの関連を検討することを目的としました。

 

便潜血検査は回数に応じて、大腸内視鏡検査は時期に応じて大腸がん死亡・罹患のリスクが低下

便潜血検査と大腸内視鏡検査の受診状況は3回(1990年、1995年、2000年)のアンケート調査の中で、「過去1年以内に検査を受けたかどうか」から把握しました。3回のアンケート調査で、1回でも大腸内視鏡検査を受けたと回答した人は2,407人、残りの集団で1回でも便潜血検査を受けたと回答した人は15,649人、どちらも受けていないと回答した人は12,325人でした。
便潜血検査を受けていないグループ(未受診)を基準とした場合の、1回受診したグループ(便潜血検査1回)、2・3回受診したグループ(便潜血検査2回または3回)のその後の死亡・罹患リスクを比較しました。また、大腸内視鏡検査を受けていないグループ(未受診)を基準とした場合の、3回(1990年、1995年、2000年)の受診時期における、その後の死亡・罹患リスクを比較しました。

観察開始から14年間の追跡期間中に、大腸がんで死亡した人は、大腸内視鏡検査群では12人(0.5%)、便潜血検査群では64人(0.4%)、未受診群では104人(0.8%)でした。大腸がんに罹患した人は、それぞれ、大腸内視鏡検査群では46人(1.9%)、便潜血検査群では391人、未受診群では409人(3.3%)でした。
便潜血検査の回数が多いほど、大腸がんの死亡リスクと罹患リスクが低いことがわかりましたが、非進行性大腸がん罹患との関連はみられませんでした。また、大腸内視鏡検査では、未受診に比べて、2000年に受けた人ではその後の大腸がん死亡リスクが69%低いことがわかりました。一方で、直近の検診が1990年、1995年の人では関連がみられませんでした。この結果は、大腸がんの罹患リスクでも同様の関連がみられました。

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調整因子:年齢、性別、地域、喫煙歴、飲酒歴、糖尿病歴、仕事、BMI、運動習慣、赤身肉摂取量、野菜摂取量、魚摂取量、果物摂取量、乳製品摂取量、コーヒー摂取量、胸部レントゲン歴、胃レントゲン歴
†大腸がんを除く

 

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調整因子:年齢、性別、地域、喫煙歴、飲酒歴、糖尿病歴、仕事、BMI、運動習慣、赤身肉摂取量、野菜摂取量、魚摂取量、果物摂取量、乳製品摂取量、コーヒー摂取量、胸部レントゲン歴、胃レントゲン歴
†大腸がんを除く

 

今回の結果からみえてきたこと

今回の結果では便潜血検査は回数が多いことが、大腸がんの死亡・罹患リスクの低下と関連していました。14年間の追跡期間中に便潜血検査を2回または3回受けたと回答した人は1回以下の人よりも、より多く便潜血検査を受けていたと考えられ、便潜血検査を頻繫に受けることが大腸がん死亡・罹患のリスクの低下につながった可能性が考えられました。
便潜血検査を2回または3回受けたと回答した人では、全がん死亡と全死亡リスクが低かった一方で、全がんの罹患リスクとは関連がみられませんでした。便潜血検査を複数回受ける人は、死亡リスクが低い集団であったことなどが影響している可能性が考えられました。しかし、全がん死亡や全死亡のリスク低下よりも、大腸がんの死亡リスクでより大きな低下がみられたことから、便潜血検査は大腸がんの死亡リスクを減らすと考えられます。
また、2000年に大腸内視鏡検査を受けた人の大腸がん死亡・罹患リスクが低いことがわかりました。大腸内視鏡検査を2000年に受けた人では大腸がん死亡・罹患のリスクが低下していましたが、それ以前に受けた人では大腸がん死亡・罹患のリスクの低下はみられませんでした。このことから、大腸内視鏡検査を受けてから10年以上経つとその効果が減少することが推察されます。
米国予防医療専門委員会やアメリカがん協会などの多くの組織の勧告では、便潜血検査は毎年、大腸内視鏡検査は10年に1回受けることが勧められています。今回の結果はその方針に沿うものでした。この研究の限界として、本研究での「大腸がん検診」を受けたかどうかは、各調査時点の過去1年間について質問したアンケートの回答から把握したものであるため、実際の受診の状況を正しく反映できていない可能性が考えられます。
便潜血検査と大腸内視鏡の有効性を同時に評価するコホート研究は少なく、今後もさらなる研究が必要です。

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