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現在までの成果

動物性、植物性、総たんぱく質摂取量と肺炎死亡リスクの関連

―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告―

 

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防と健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。平成2年(1990年)と平成5年(1993年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、東京都葛飾区、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の11保健所(呼称は2019年現在)にお住まいだった40~69歳の方々のうち、研究開始から5年後に行った食事調査票に回答し、がん、循環器疾患、腎疾患、糖尿病になっていなかった約8万人を、平成28年(2016年)まで追跡した調査結果にもとづいて、動物性、植物性、総たんぱく質摂取量と肺炎死亡リスクとの関連を調べた結果を専門誌で論文発表しましたので紹介します(Am J Clin Nutr. 2021年12月Web先行公開)。

近年、たんぱく質を多く摂取することの健康への影響について関心が高まっています。私たちは、これまでにエネルギーに対する総たんぱく質と動物性たんぱく質の摂取割合は、死亡との明らかな関連はみられず、エネルギーに対する植物性たんぱく質の割合が多いほど、死亡全体のリスクの低下がみられたことを報告しています(動物性・植物性たんぱく質の摂取と死亡リスクの関連)。一方で、日本人高齢者の死因順位で上位となる肺炎死亡リスクについては、たんぱく質摂取量との関係はまだよくわかっていません。そこで、私たちは、多目的コホート研究において、動物性、植物性、総たんぱく質摂取量と肺炎死亡リスクとの関連について調べました。

研究開始から5年後に行なったアンケート調査の結果を用いて、男女別に動物性、植物性、総たんぱく質摂取量について、総エネルギー摂取量に対する割合を算出しました。次に総エネルギーに対するたんぱく質の割合が少ない順に、人数が均等になるよう対象者を4つのグループに分け、その後約18年間の肺炎死亡との関連を調べました。エネルギー摂取量に対する各たんぱく質摂取の割合が最も低いグループを基準とし、それ以外のグループの肺炎死亡リスクを比較しました。分析にあたって、年齢、地域、体格、喫煙状況、アルコール摂取量、余暇の身体活動量、降圧剤服用の有無、コーヒー・緑茶の摂取頻度、総エネルギー摂取量の影響、閉経の有無(女性のみ)の影響をできるだけ取り除き、さらに総エネルギーに対する脂肪酸摂取量の割合の影響も取り除いて、関連を調べました。

 

女性ではエネルギー摂取量に対する総たんぱく質摂取量の割合が高いほど、肺炎死亡リスクが低い

平均18.4年の追跡調査中に、990人(男性634人、女性356人)が肺炎で死亡しました。男性では総たんぱく質の摂取割合と肺炎死亡リスクには統計学的有意な関連はみられませんでしたが、女性ではエネルギーに対する総たんぱく質摂取の割合が高いほど、肺炎リスクが低い結果でした。植物性、動物性たんぱく質摂取の割合では、男女ともにいずれも肺炎死亡との間に統計学的に有意な関連はみられませんでした。(図1) 

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図1 エネルギー摂取に対するたんぱく質摂取量の割合と肺炎死亡リスクの関連

 

今回の研究からみえてきたこと

今回の研究の結果では、女性において、エネルギー摂取量に対する総たんぱく質摂取量の割合が高いほど、肺炎死亡リスクが低いことが明らかとなりました。一方、男性ではこのような傾向はみられませんでした。男性では、全体的にたんぱく質摂取量の割合が女性より低かったことや、喫煙や飲酒といった生活習慣の影響が大きかったことと関係している可能性がありますが、さらなる研究が必要と考えられます。また、既に私たちのグループから、エネルギー摂取量に対する植物性たんぱく質摂取量の割合が多いほど、総死亡リスクが低下する、という報告があるものの、今回の研究では、肺炎死亡においては、たんぱく質の種類によらず総たんぱく質摂取の割合がリスク低下に関連していました。先行研究から、高齢者のたんぱく質摂取が多いと肺機能が高いという関連や、栄養失調による免疫低下が報告されていることから、エネルギー摂取量に対する総たんぱく質摂取量の割合が少なくならないようにすることが、肺炎死亡リスクの低下と関係する可能性が考えられました。

今回の研究の限界として、食事調査票回答時時にすでに大きな病気のある人は解析に含めないなどの考慮は行ったものの、たんぱく質の摂取量が少ないグループに元々健康状態のよくない人が含まれている可能性が否定できないこと、たんぱく質摂取量に影響を及ぼす他の生活習慣や社会経済的背景などの影響をすべて除ききれていない可能性があることなどがあげられます。

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