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現在までの成果

男女別、喫煙と脳卒中病型別発症との関係について

多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防に役立てるための研究を行っています。平成2年(1990年)に行いましたアンケートにて、生活習慣について回答していただいた、40〜59歳の男性約2万人、女性約2万2000人の方々を11年間追跡した調査結果にもとづいて、喫煙と脳卒中発症との関連を調べた結果を国際専門誌(Stroke 2004年35巻1248-1253ページ)に発表しましたので紹介します。アジア地域の人々を対象に、喫煙の脳卒中、さらには病型別の発症の影響を、コホート研究で男女別に明らにした研究はわが国で初めてです。

喫煙者は、非喫煙者にくらべ、男性で1.3倍、女性で2.0倍、脳卒中になりやすい。

11年の追跡期間中に、男性702人、女性447人が脳卒中を発症しました。たばこを吸う人は、全く吸わない人に比べて、男性で約1.3倍、女性で約2.0倍脳卒中になりやすいことがわかりました(図1)。女性の喫煙者の割合は6%と、男性の53%に比べると小さく、データ(推定値)は不安定ですが、脳卒中発症へのたばこの影響は、男性よりも強い傾向がありました。

図1 男女別、喫煙と脳卒中発症との関係

たばこの煙には種々の有害な物質が含まれていることはよく知られています。その中のある成分は、血管の壁に働いて動脈硬化を促進したり、血管を狭めたりする作用があることが知られています。
ここでいう脳卒中とは、脳のある血管が破れることにより発症する脳出血やクモ膜下出血、それと脳のある血管がつまって発症する脳梗塞などをあわせた、脳卒中全体を意味しています。

たばことクモ膜下出血の関係は強く、本数が増えるほどリスクが高くなる

なかでも、喫煙とクモ膜下出血(男性73人、女性106人に発症)の関係は強く、たばこを吸う人は、全く吸わない人に比べて、男性で3.6倍、女性で2.7 倍、なりやすいことが示されました。さらに、1日にたばこを吸う本数が増えるほど、クモ膜下出血の発症が段階的に増えていきます(図2)。
クモ膜下出血の発症の原因としては、血圧や喫煙が報告はされていましたが、今回のようにたばこの1日に吸う本数との関係で、1-19本よりも、20本以上で発症の危険が上昇してくることを示した研究はほとんどありませんでした。

図2 喫煙本数とクモ膜下出血発症との関係

男性では、たばこによってラクナ梗塞や大血管脳梗塞のリスクも上昇する

男性では、たばこを吸えば、全く吸わない人に較べて、ラクナ梗塞(脳の中の細い血管がつまる脳梗塞で144人に発症)が約1.5倍、大血管脳梗塞(太い血管がつまることによっておこる脳梗塞で56人に発症)が約2.2倍おこりやすいことがわかりました(図3)。
40本以上の高度喫煙者では、ラクナ梗塞、大血管脳梗塞はいずれも約2倍おこりやすくなります。

図3 喫煙とラクナ脳梗塞および大血管の脳梗塞の発症との関係

脳卒中にならないためには、「たばこを吸わない」が原則

JPHC研究では、脳卒中のうち、男性で17%、女性で5%は、もしたばこを吸っていなければ、予防できたと推定されます。この割合を、1999年の人口動態統計や患者調査から推定された日本全体の脳卒中に当てはめてみました。すると、1年間で、男性で1万1000人、女性で4000人、合計1万5000人の脳卒中死亡と、男性で12万人、女性で4万人、合計16万人の脳卒中患者が、たばこを吸わないことで予防できる計算になります。脳卒中の予防には、食塩を控え、バランスの良い栄養をとり、血圧を低めにコントロールするとともに、たばこを吸わないようにすることが大切です。

参考文献: Mannami T, Iso H, Baba S, Sasaki S, Okada K, Konishi M, Tsugane S; Japan Public Health Center-Based Prospective Study on Cancer and Cardiovascular Disease Group. Cigarette smoking and risk of stroke and its subtypes among middle-aged Japanese men and women: the JPHC Study Cohort I. Stroke. 2004 Jun;35(6):1248-53. Epub 2004 Apr 29.

研究内容に関する問い合わせ先: 香川大学医学部
人間社会環境医学講座 衛生・公衆衛生学
万波俊文

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