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現在までの成果

アブラナ科野菜と大腸がん罹患リスクとの関連について

―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告―

 

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防と健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。平成2年(1990年)と平成5年(1993年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の10保健所(呼称は2018年現在)管内にお住まいだった方々のうち、研究開始から5年後に行った食事調査票に回答した、45~74歳の約8万8千人の方々を平成25年(2013年)まで追跡した調査結果にもとづいて、アブラナ科野菜摂取と大腸がん罹患リスクの関連を調べた結果を専門誌で論文発表しましたので紹介します(European Journal of Cancer Prevention 2018年11月ウェブ先行公開)

大腸がんは、世界で最も罹患数の多いがんのひとつであり、食生活や生活習慣の改善によって予防できる可能性のあるがんであることから、これまでにも多くの観察研究が行われてきました。私たちは過去に、野菜と大腸がんとの関連について、関連がみられなかった、と報告しています(野菜・果物摂取と大腸がんとの関係について)。しかし、近年、野菜のなかでも、イソチオシアネートや抗酸化ビタミンなど、生理活性物質を豊富に含むアブラナ科野菜は、がんを予防する働きを持つことが期待されることが報告されています。これまでにアブラナ科野菜摂取と大腸がんリスクの関連を調べた複数の研究を統合したメタアナリシスが2報発表されていますが、結果は一貫していません。加えて、アブラナ科野菜の摂取が多いアジアで行われた研究はわずかしかありません。そこで、私たちは、日本人88, 172人(男性41,164人・女性47,008人)におけるアブラナ科野菜摂取と大腸がんリスクとの関連を調べました。本研究では、138項目の食物摂取頻度質問票(FFQ)の回答を用い、漬け物を含む11項目のアブラナ科野菜(キャベツ、だいこん、小松菜、ブロッコリー、白菜、チンゲンサイ、からし菜、フダンソウ、たくあん、野沢菜漬け、白菜漬け)より総アブラナ科野菜摂取量を推定し、それぞれ男女別の摂取量により4つのグループに分類しました。その後、アブラナ科野菜摂取量が一番少なかったグループを基準とし、その他のグループの大腸がんおよび部位別大腸がんリスクとの関連を検討しました。

 

男性、女性ともにアブラナ科野菜の摂取量と大腸がんリスクには関連がみられなかった

2013年までの追跡の結果、2,612人が大腸がんと診断されました。男性、女性ともにアブラナ科野菜摂取と大腸がんリスクの間に統計学的に有意な関連はみられませんでした(図1)。すでに大腸がんが発生していることでアブラナ科野菜摂取量が変化している影響を除くため、追跡開始から3年以内に大腸がんと診断された人や上皮内がんの症例を除いた場合でも関連は変わりませんでした。
続いて、アブラナ科野菜摂取と大腸がんのリスクを部位別に検討したところ、男性、女性ともにアブラナ科野菜摂取と直腸および結腸がんリスクの間に統計学的に有意な関連はみられませんでした(図なし)。しかしながら、結腸がんに関しては、3年以内の診断および上皮内がんの症例を除外すると、男性では結果は変わりませんでしたが、女性においては、アブラナ科野菜の摂取が多いほど、統計学的に有意ではないものの、結腸がんリスクが低くなる傾向がみられました(図2)。
結腸がんの症例をさらに細かく分類して検討してみたところ、男性において、アブラナ科野菜の摂取量が2番目と3番目に多い群で統計学的有意に上行結腸がんリスクが上昇していましたが、女性においては、同様の関連はみられませんでした(図3)。

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この研究結果よりみえてきたこと

本研究の結果から、全体的には、アブラナ科野菜の摂取は大腸がんリスクと関連していないことが示されました。
しかし、女性において、がんによる食事の変化の影響を取り除くため、3年以内に大腸がんと診断された人を除外し、さらに、検診で発見されることの多い上皮内がんの症例を除外して検討したところ、アブラナ科野菜摂取量が高くなるにつれ、結腸がんリスクが低くなる傾向がみられました。この結果はオランダ人女性を対象として行われた研究と類似した結果であり、アブラナ科野菜中の抗酸化物質やイソチオシアネートの予防的作用の可能性が考えられました。しかし、今回の研究では、症例数が多くはなかったために、統計学的に有意ではありませんでした。
男性でアブラナ科野菜の摂取が2番目と3番目に多い群で上行結腸がんリスクが有意に上昇していましたが、この結果は、フィンランド人の喫煙男性を対象とした研究結果と同様であり、本研究においても男性の約50%が喫煙者であることが影響していると考えられます。しかしながら、非喫煙者と喫煙者で分けて検討しても大きな違いは見られませんでしたので、さらなる研究結果の蓄積が必要です。

 

野菜の摂取不足には注意が必要

本研究では、アブラナ科野菜の大腸がんの予防効果は、全体では明らかではありませんでしたが、国際的には、非でんぷん性野菜および果物は口腔がん・食道がんなどに予防的であることが報告されており、私たちのグループでも、アブラナ科野菜と肺がんリスク低下(アブラナ科野菜と肺がんとの関連について)、全死亡リスク低下(アブラナ科野菜と全死亡および疾患別死亡との関連について)、を報告しています。また、複数の研究を統合したメタアナリシスの結果からも、野菜および果物の摂取は全死亡、特に循環器疾患死亡リスク低下との関連が報告されていますので、不足しないことが大切であると考えられます。

 

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