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多目的コホート研究(JPHC Study)

2009/3/10 ウイルス感染状況を考慮した、肝がんをエンドポイントとする4つの研究成果について

JPHC研究からの論文発表のお知らせ

多目的コホート(JPHC)研究から、ウイルス感染状況を考慮した肝がんをエンドポイントとする4つの研究結果が発表されました。
(1)肝機能指標(血中ALT値)と肝がん    European Journal of Cancer Preventnion 2009;18:26-32.
(2)メタボリック症候群関連要因と肝がん    Cancer Causes & Control 2009 in press
(3)野菜・果物および抗酸化物質摂取と肝がん    British Journal of Cancer 2009;100:181-184.
(4)イソフラボン摂取と肝がん    International Journal of Cancer 2009;124:1644-1649.

対象集団における肝炎ウイルス感染と肝がん

多目的コホート研究では、肝炎ウイルスに感染しているハイリスクグループにおける肝がん予防に資するエビデンスを得るために、C型肝炎ウイルス(HCV)とB型肝炎ウイルス(HBV)の感染状況を明らかにした上で、生活習慣などと発がんリスクとの関係を検討しました。 40—69歳の男女約2万人のうち、肝炎ウイルスに感染している人の割合は、HCVが3.7%、HBVが2.4%、HCVとHBVの重感染が0.1%でした(1)。 平均約12年追跡調査した結果、109人に肝がん発生を確認しました。そのうち肝炎ウイルスに感染していた人の割合は、HCVが69%、HBVが9%、重感染が2%で、合わせて約8割でした(1)。 肝がんの大半が陽性者から発生しています。肝がん予防のためには、まず肝炎ウイルス感染の有無を知り、感染が認められた場合には、専門家の治療やその後のフォローを受けて、肝がんへの進行を予防したり、早期に発見したりする必要があります。

アルファ・カロテン、ベータ・カロテンが予防的 イソフラボンは女性でリスクに

まず、それぞれの研究の結果を簡単に示します。 (1)血中のALT値が高いグループほど、肝がんのリスクが高く、その増加は肝炎ウイルス感染に関わらず見られました。 (2)肝炎ウイルス感染のある人でもない人でも、肥満や高血糖の人の方が肝がんの発生リスクが高いことがわかりました。 (3)野菜、特に緑の葉野菜で、摂取量が多いグループで肝がんの発生リスクが低く、果物では摂取量が多いグループで高いという傾向が見られました。 さらに、抗酸化物質の摂取量を算出して比べると、アルファ・カロテン、ベータ・カロテンでは摂取量が最も多いグループで肝がんのリスクが低い傾向が見られ、逆にビタミンCでは摂取量が最も多いグループで肝がんリスクが高い傾向が見られました。 肝炎ウイルス感染者に限ると、アルファ・カロテン、ベータ・カロテンの予防効果が強まりました。 (4)男女別に分析すると、女性では、イソフラボン摂取量の最も多いグループの肝がんのリスクが高いことがわかりました。男性では差がみられませんでした。肝炎ウイルス感染者に限っても、同様の結果でした。

研究の結果について

対象集団で追跡期間中に発生した肝がんは100例程度と少なく、以上の結果が確実といえるレベルには達していません。その確認には、同様の検討が他のコホート研究などの疫学研究でなされると共に、なぜそうなるのかという詳しいメカニズムが解明される必要があります。 肝がんのリスク要因としては、喫煙と飲酒が確立していることから、感染者では特に、禁煙と節酒が大切になります。 さらに、多目的コホート研究では、肥満、糖尿病・高血糖、女性のイソフラボン高摂取が肝がんリスクを高め、身体活動、コーヒー飲用、野菜の摂取がリスクを下げる可能性が示されています。まだ他の研究による確認が必要な段階ではありますが、肝炎ウイルス感染者であれば、無理のない範囲で取り入れてみるのも良いかもしれません。 詳しくは、ホームページに掲載された概要版および詳細版をご覧ください。
肝機能指標(血中ALT値)と肝がんとの関連について —概要—
メタボリック症候群関連要因(メタボ関連要因)と肝がんとの関連について —詳細—
野菜・果物および抗酸化物質摂取と肝がんとの関連について —詳細—
イソフラボン摂取と肝がんとの関連について —詳細—

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